違■背■、退職金の計算基礎の変更を伴うもので定年制を定め直して、継続雇用措置に変更することが可能であるかです。大阪地裁平成25年2月15日判決(大阪経済法律学園〈定年年齢引き下げ〉事件)では、満70歳とされていた定年年齢を満67歳へ引き下げる内容に就業規則を変更したところ、これらを定めていた就業規則の変更が有効と認められるか否かが争われました。就業規則の不利益変更が有効か否かについては、現在の労働契約法に定められている内容とほぼ同様の基準を用いており、「変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応」を考慮対象にしつつ、学校法人であったという特徴から「同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して、当該変更が合理的であるといえることが必要」という判断基準が示されました。そして、定年引下げについては、既得権を消滅、変更するものではないとしつつも、「在職継続による賃金支払への事実上の期待へのあり、実質的な不利益は、賃金という労働者にとって重要な労働条件に関するもの」であることを理由に、労働者にそのような不利益を法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであることが必要とされました。このような基準に照らして、変更の必要性については、学校法人という特殊性の観点から私立大学間の競争が激化していること、定年を引き下げる大学が複数あり満70歳定年制の大学はむしろ少数であること、教員年齢の偏りが生じていたことなどから、一定の必要性は肯定されつつも、財政上の理由はなく緊急性があったとまでは認められませんでした。変更内容による不利益の程度については、平均的な定年年齢であることから内容自体は相当なものとされつつも、単に相当であればよいだけではなく、「重要な労働条件に不利益を課すものであるから、合理的であるといえるためには、……代償措置ないし経過措置である……再雇用制度が、かかる不利益に対する経過措置・代償措置として相当なものであるといえることが必要」という条件を加えました。そして、「特別専任教員又は客員教授としての再雇用は、本件定年引き下げ以前から存在する制度であるから、これらをもって、本件定年引き下げの代償措置と評価することはできない」とされ、さらに、当該再雇用の対象とならなかった場合の割増退職金制度もないことなどから、代替措置として不十分であるとして、就業規則の不利益変更として合理性を有しているとは評価することができず、無効であると判断されました。制度は、希望者全員を再雇用するものではなく、一定の基準をもって再雇用対象者を選定するものであり、いわゆる高年齢者雇用安定法が定める継続雇用制度とは異なるものでした。3ご定年制度の再設定よりは不利益の程度が小さいと思われるものであっても、厳格な判断が行われています。高齢従業員の就業確保措置を実現するにあたって、定年制を廃止する方法も選択肢にありますが、一度廃止した定年制を改めて設定することは、より困難であろうと考えられます。雇用を広げていくものであり、望ましい施策ではありますが、一度廃止した後に再設定することは困難であることに留意して、自社の実情に合うものであるのかについては、慎重に検討していくべきでしょう。ると、継続雇用制度を維持した状態で、定年を延長しつつ、自社における高齢者雇用の課題を明らかにしながら、最終的な方法として定年制の廃止を目ざすという方法がよいのではないかと思います。なお、この裁判例で触れられている再雇用紹介した裁判例が、定年の引下げという定年制の廃止は、70歳にとどまらず高齢者このような法的な課題もあることもふまえ裁判例からわかる留意事項■41エルダー知っておきたい労働法AA&&Q
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