エルダー2024年2月号
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 3■■■AIを駆使することでストレスの低減や仕事のやりがいにつながるプラスの効果があるのかを可視化することを目的としたプロジェクトです。ほかの先生方にも協力してもらい、いろいろなアプローチで研究を進めてきましたが、結論をいえば、AIなどの先進技術による雇用に対してのマイナスの影響はいまのところ少なく、むしろプラスの影響があることがわかっています。先ほどお話ししたように、AIを使っている人ほどタスクトランスフォーメーションが起き、高度な仕事を多くになうようになります。その結果、創意工夫が必要なむずかしい仕事ではあるものの、賃金が高くなり、仕事に対するやりがいも高まります。また、そういった仕事ではストレスが少ないといった効果も生まれています。労働者個人の主観的生産性の指標を見ても、生産性が上がったと感じるなどポジティブな影響も出ています。東京大学の川■口■大■司■先生が行ったロボティクスの研究では、かつて日本で産業用ロボットが導入され普及した際には、配置転換などによって人材の有効活用が進み、むしろ雇用が増えていたことがわかっています。その背後には、タスクトランスフォーメーションがあったと考えられ、日本ではテクノロジーの進化が雇用にプラスの影響を与えうることが見えてきました。山本 くれるAIを組み込んだ機械などが登場して、いままで以上に働きやすくなる側面はあるでしょう。ですが、むしろ私が期待しているのは、高齢者のこれまでの経験や知識を活かす仕事です。生成AIなどはいかにももっともらしい答えを出しますが、じつは間違った回答をすることも結構あります。しかしそれが本当に合っているのかどうかは、その業界や業務に精通し、知識や経験が豊富な人でなければ判断できません。高齢者は、その判断を行ううえで貴重な人材になり得ると思います。例えば、生成AIはこれまで人がやってきたことをパターン化し、答えを導き出しますが、これまでの経験に照らし合わせてどう違うのかを目利きができる人がいないと安心して使えません。こうした場面でこそ、高齢者が価値を発揮できるのではないかと思います。肉体的、身体的な衰えをサポートして間違いを正すことでAIの精度は上がって―AIを駆使することで雇用以外にもストレスの低減や仕事のやりがいにもつながるというのは驚きです。そのことは心身の機能が低下していく高齢者の仕事や働き方にもプラスの影響を与えるのでしょうか。エルダー

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