(インタビュー/溝上憲文撮影/中岡泰博)AIを恐れずに「使う」姿勢が専門スキルの習得以上に重要となるいきます。経験豊富な高齢者が「この答えはダメです」と、ダメ出しをしてあげると、AIは別の答えを出そうとくり返し学習していきます。若い人だけだと、何が正解かわからないことがあり、AIが出した答えを鵜■呑■みにしてしまい、よい結果につながりにくい場合もあります。高齢者がかかわることでAIの学習スピードが高まり、それが生産性の向上につながっていくのです。山本 ニーズ次第ですが、特に人手不足の分野では、そうしたロボットが当然増えてくると思います。医療・介護分野では、人を抱えたり持ち上げたりするための機械がすでに導入されていますが、AIを使うことで要介護者の反応を見ながら操作できるように改善されていくでしょう。直接的な体を使う仕事以外でも、AIが得意なシフトを組む作業や日誌をつけるといった関連業務が自動化されていけば、人手不足の現場にとっては省力化に貢献できると思います。また、介護や看護の仕事は資格が必要になりますが、資格を必要とする専門業務以外の部分を切り離し、その部分で高齢者に働いてもらうこともできます。専門業務とそれ以外の仕事を切り分けることで、70歳を過ぎてもいろいろな場所で働く機会が増えてくると思います。山本 はありませんが、大事なことはAIに脅威を感じたり、「まったく自分には関係のないものだ」と思わないで使ってほしいということです。みなさんが日ごろから使っている、インターネットの検索機能にしても、見方を変えればAIになるわけです。どういう場面でどのように使えるのか、自分の仕事に適用できることを探っていくようなリテラシーで十分だと思います。業務の効率化、付加価値の創出という視点を持ってAIの使い方を考えることが重要です。また、ユーザーフレンドリーを高める工夫も進んでいます。今後は会話形式でAIがいろいろな答えを出してくれ当然、リテラシーがあるにこしたことるなど、それほどAIの知識がなくても、使いやすく進化していくことでしょう。だからこそ、AIに苦手意識を持たずに「問題なく使える」と思うことが何より大切だと思いま す。―山本 ういうところで活用されているかなどの事例を知ることがむしろ重要です。これは企業も同じです。生成AIにしても恐れることなくまず使ってみる。使ううちにどこに問題があり、どのくらいの精度があるのか、あるいはどこに使えるかがわかってきます。「むずかしそうだから」とあきらめずに、つねに新しい技術に対してアンテナを高くして使っていくことが、生産性向上につながっていくと思います。あまり必要ないと思います。AIがど―AIを使った省力化ロボットが次々に登場すれば、身体的にも楽になりますね。―その一方で、高齢者もAIやデジタルに関するリテラシーが必要になるのではないでしょうか。要はないでしょうか。プログラミングなどの専門技術を学ぶ必2024.24慶應義塾大学 商学部教授山本 勲さん
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