エルダー2024年3月号
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可能性に気づいていないミドル社員の戸惑い「定年=リタイア」ではない時代欠かせないのは「キャリア自律」に弟子入りし、後世に残るキャリアを50歳からつくっていったのです。現代の私たちにも通じる、示唆に富んだ話ではないでしょうか。大切なのは、お金や肩書き、給料の高さではなく、自分自身の「働きがい」というものを見いだしていくことだと私は思います。企業を訪ねると、ミドル層の方々からいろいろな声が寄せられます。また、私の著書を読まれた方から手紙をいただくこともあります。あるミドル世代の男性は、大手上場企業のグループ企業で順調に出世され、役員手前まで出世したものの、職場でアクシデントがあり、その道が一時閉ざされ、途方に暮れていたそうです。そんなとき、私の本にたどりつき「この先はお金や肩書きではなく、自分自身のやりがいのために働いていこう、これから20〜30年の『オヤジの覚悟』ができたように感じます」というようなことを手紙に書いて送ってくれました。一方で、悩み続けている方も多くいらっしゃいます。定年を目前にしたある男性は、「来年で60歳定年を迎えるにあたり、勤務先から示される条件で再雇用を受けるか否かを決めなければいけない。新卒でこの会社に勤めて三十数年、他社のことは知らずに過ごしてきた。60歳以降をどう生きればよいのか、どう働けばよいのか、自分のなかでピンとこなくて不安だ」と悩んでいました。答えが決まらないまま、消去法的に再雇用を選んだそうですが、多くの人に当てはまるような典型的な話だと思います。人材育成やキャリア支援の世界で、最近よく「キャリアプラトー」という言葉を耳にします。組織内で昇進・昇格の可能性に行きづまり、あるいは行きづまったと本人が感じて、モチベーションの低下や能力開発機会の喪失に陥ることです。ただ、会社の枠を超えて視野を広げて考えてみると、じつは人生もキャリアの可能性も広がっていることに気づけていないのであって、すごくもったいないと思うのです。人生100年時代といわれるなか、「定年=リタイア」ではない時代がやってきました。高年齢者雇用安定法が改正され、2021(令和3)年4月から、70歳までの就業確保措置が努力義務となり、「雇用」の枠組みから、「就業」という概念で個人事業主になったり、一人社長になって会社と業務委託契約を結んで働いたり、といった選択肢も示されました。超える年齢まで働きたいと考えている人が、50代では25・1%ですが、60代になると41・4%に増加しています※1。その年齢が近づくと、まだまだ身体も動くし、もっと働きたいという気持ちになってくるようです。実際、男性は60代後半でも6割以上が働いていて、今後この数字はさらに上がっていくものと思います。いく必要があり、企業はそれを支援し、戦力として活用できるように考えていくことが大切になってきています。満足している人の割合は50歳を底に上がりはじめ、75歳になると50歳の1・7倍になります※2。ただし、ほとんどの企業では、75歳は定年も再雇用も超えています。仕事に満足して活躍し続けるには、「キャリア自律」が欠かせません。企業側からみると「自律型人材」です。「他者から管理・支配されるのではなく、自分の立てた規律や規範に則って働ける人材」と定義づけられる人材です。生懸命働いてきた人たちが多いことから、キャリア自律は非常にむずかしいとも考えています。さまざまな例を見てきたなかで、私がうまあるアンケート調査の結果をみると、70歳をそこで、いろいろな可能性を自分から考えて一つ、希望の持てるデータがあります。仕事にしかしミドル世代には、会社の辞令に則り一2024.38※1 パーソル総合研究所「シニア従業員とその同僚の就労意識に関する定量調査」(2021年)※2 リクルートワークス研究所『定年後のキャリア論―いまある仕事に価値を見出す―』「全国就業実態パネル調査」(2021年)

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