エルダー2024年3月号
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「お金・肩書き」から「働きがい」へパラダイムを変えていくことが大事くいっていると思う人たちは、役職定年や定年をキャリアの節目・通過点と考えること。その通過点を経て、60・70代の幸せなキャリアをどう描きたいのかをしっかり考え、現在の仕事の意味づけをしていくことが重要なのです。変わっていきます。50歳では比較的に正社員が多いのですが、75歳では雇用形態はさまざまで、自営業も増えてきます。職業をみると、50代前半は事務が中心で、70代になると多様です※3。業務委託契約などを結んで個人事業主になるなど、一人社長になることも一つの選択肢に入っていきます。こうした話をバリバリ働いているミドルの方々にすると、「独立はリスクがある」といった反応をされるのですが、一社依存で働いていくより、個人事業主になって、まずはこれまでお世話になった会社と業務委託契約を結び、ある程度軌道に乗ったところで2社目、3社目と仕事を広げることができれば、収入源と仕事が複数になり、ローリスクになるのではないでしょうか。自分の可能性が広がりますし、自分を中心にして仕事がいくつか広がっていく可能性があります。そのためには、自分らしさを大切にして、本来の〝出世〟をすることが大事だと思います。出世は「世に出る」と書きます。つまり、社外でも評価され活躍できるプロフェッショナルになることだと思うのです。これを意識して、50歳から、できればもう少し早いタイミングから、自らキャリアをつくっていくことが大切なのではないでしょうか。人を大切にする経営とは、ミドル層以降については、雇用を守ることではなく、社内外で通用するプロに育てることではないかと思います。例えば、ある中堅の工作機械メーカーでは、基本理念に「ビー・プロフェッショナル」を掲げ、プロフェッショナルを志し、会社としてそれをバックアップする仕組みを整えています。こういう取組みが広がると、新しい時代に呼応するような会社が増えていくように思います。若い人たちの意識も変化していて、転職サービスに登録をする新入社員は、12年前から約30倍に増加しているそうです※4。すぐに転職したいということではなく、自分のキャリアなどを登録しておくとオファーがくるという仕組みなので、自分の市場価値を測るバロメーターにしたい、ということもあるのだと思います。で最も重要なのは、「お金・肩書き」ではなく、「働きがい」を大切にしていくことだと考えています。ミドル世代の人、特に一つの会社で長く働いてきた人に「今後どういう条件で働いていきたいか」とたずねると、まず給料の話が出てきます。40・50代でも転職は可能といわれますが、企業は本音のところでは若手人材を採用したいと考えていますから、実態としてそう簡単なことではありません。せんが、定年後は年金や企業独自の年金もあり、いまと同額の労働収入が必ずしも必要になるわけではありません。住宅ローンの返済が終わり、子育てが一段落していれば、介護の問題はあるにせよ、ライフプランのなかでお金がかかる部分が終わっている場合も多いでしょう。月10万円ほどの労働収入があれば家計は十分回るという説もあります。そう考えると、気持ちが楽になるはずです。高い給料を意識しなくなると、キャリアの選択肢はグッと広がります。業希望理由が変わる」という結果があります※5。※3 総務省『国勢調査』※4 パーソルキャリア株式会社「新卒入社直後のdoda登録動向【グラフ】4月度doda会員登録者数の推移」(2023年6月14日)※5 厚生労働省「高齢社会に関する意識調査」(2016年)すが、60・70代になると、生きがいや社会参加という理由が高くなるのです。私自身も大企業をスピンアウトして一人で起業しましたが、それによって社会とつながり、お役に立てて、生さまざまな事情があるので、一概にはいえま厚生労働省の調査によると、「高齢期には就9特集生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム 〜開催レポートⅡ〜50歳からの幸せなキャリア戦略を考えるうえ40・50代までは経済上の理由が非常に高いので50歳と75歳を比較すると、就業形態も職業もエルダー

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