シニア社員に何をしてもらうのかをきちんと考えるしかも重要なことは、人材戦略は企業によって異なるということです。つまり、唯一最善の普遍的な「評価・賃金」というものはないと考えてください。このことが第一の視点になります。第二の視点は、シニア社員ならではの特別な「評価・賃金」は存在しないということです。シニア社員の「評価と賃金」がもし存在するならば、それは、シニア社員がシニアであるからではなく、会社がシニア社員をあるタイプの社員として活用する人材戦略をとっているからなのです。つまり、シニア社員の社員タイプを確認することが、シニア社員の「評価・賃金」を考える出発点になるということです。第三の視点は、シニア社員の「評価・賃金」を考えるときには、シニア社員は「社員の一部」であることをつねに頭に置いておく、ということです。いい換えると、シニア社員の「評価・賃金」は、シニア社員のみをみて構築しない、ということになります。もし、シニア社員だけをみて「評価・賃金」を構築すると、人事管理全体の体系性が崩れ、ほかの社員との均衡がとれない人事管理と「評価・賃金」ができあがってしまいます。シニア社員は社員の一部ですから、シニア社員の「評価・賃金」は全体感を持ちながらつくっていく。この視点をつねに持って臨んでほしいと思います。以上の3点が、シニア社員の「評価・賃金」の具体的な制度や施策を考えるうえでの基本的な視点であると考えています。シニア社員の「評価・賃金」を考えるためには、シニア社員をどう活用するのかを決めることが起点となります。ここからは、シニア社員の活用の仕方に焦点をあてて話をしていきます。シニア社員に働いてもらうということは、基本的なことですが、シニア社員を「雇用」することです。ここであらためて、雇用の意味を確認しておきたいと思います。「雇用」とは、企業にとっては、働いてもらい、あるいは会社に貢献してもらい、お金を払うこと。労働者にとっては、働いて、あるいは会社に貢献して、稼ぐことです。したがって雇用の内容は、会社の都合(業務上の必要性)と、労働者の働くニーズのすり合わせで決まります。このときに重要なのは、シニア社員がシニアになったときに「私はこういう仕事をしたい」といっても、それだけでは仕事の内容は決まらない、ということです。ス再雇用が一般的ということを前提に考えると、60歳定年で雇用契約は一度切れて、その後もう一度、雇用契約を再締結し、60歳以降は再雇用になる、ということになります。です。雇用契約をもう一度結ぶことは、採用の一形態になりますので、再雇用はいわば「社内中途採用」ということなのです。社は応募してきた人から「何を買うのか」を考えます。一方で、応募した人は、会社に対して「何を売るのか」、あるいは会社に「どう貢献するか」ということをアピールします。ニア社員から何を買うのか」。シニア社員は、「会社に何を売るのか」、あるいは、「会社にどう貢献するのか」。このことをお互いに考え、明確化して、活用の仕方が決まっていく、ということになります。のことがいえます。例えば60歳でも55歳でもよいのですが、多くの会社では、ある年齢で「役割転換」あるいは「キャリア転換」が行われま現在の高齢者雇用の仕組みは、60歳定年プラつまり、定年を契機にした雇用契約の再締結中途採用であるとすると、採用する際に、会シニア社員の場合も同様です。企業は、「シ再雇用だけでなく、定年延長の場合にも同様2024.322
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