エルダー2024年3月号
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定年延長と再雇用、何が違うのか定年延長を行うときに留意したいこと無制約で一般職は制約ありですから、同じ仕事をしていても賃金差があってよいのです。それは制約度が違うからということになります。また、賃金を考えるときに、もう一つ重要な視点があります。これは60歳まで、あるいは定年まで、どういう賃金制度であったかということです。もし、いわゆる年功賃金をとっている場合、年功賃金の特性として、定年時の賃金は、仕事に基づくパフォーマンスより高めになっています(賃金>貢献度)。すると、シニア社員になったときに、この高めの賃金部分をなくし、賃金とパフォーマンスをあわせるという調整が必要になってきます。ただ、この高めの賃金部分の存在は多くの人が納得するのですが、実際にどれくらいの調整を行えばよいのか、だれも知らないのです。そのため、この調整を行うことは、非常にむずかしいのですが、こういう視点のあることを忘れずにいてほしいと思います。まとめると、考えられる合理的なシニア社員の賃金は、仕事原則と制度配慮原則に基づく「社員タイプに合わせた賃金制度の構築」と、「年功賃金の特性に合わせた調整」の留意点をふまえた賃金モデルということになると思います。これらの視点を持っていれば、「同一労働同一賃金」にも対応できると思います。最後に、定年延長と再雇用の関係について、お話ししたいと思います。シニア社員の人事制度については、定年延長(定年制をなくす場合も含む)にするか、再雇用制度にするかによって基本となる骨格が決まります。では、定年延長と再雇用では何が違うのか。この点について、どのように考えたらよいのでしょうか。まず、理解してほしいのは、多くの企業はいま、60歳定年プラス再雇用という制度を導入しているということです。しかし、高年齢者雇用安定法のもとでは、希望者全員が65歳まで働くことができます。このことから「60歳定年時代」はすでに終焉しており、現在は「実質65歳定年時代」にある、という感覚を持っていただきたいと思います。定年制というのは、年齢を理由にした「雇用契約の終了機能」が基本的な機能ですが、その機能は喪失したと考えるべきでしょう。では、いまの定年制の機能は何かというと、定年をきっかけにして、「キャリア・役割の転換を促進する」が主要機能になっていると考えられます。違うのでしょうか。定年延長、再雇用にかかわらず、シニア社員を戦力化しなくてはいけないのは同じです。また、いずれにしても、「キャリア・役割転換」が求められます。そういう意味では、定年延長も再雇用も違いはない、と考えたほうがよいと思います。定年延長で何をねらうのかを明確にして制度設計にあたっていただきたいと思います。先ほどいったように、60歳定年がキャリア・役割転換を促進する装置になっているので、定年延長を行う場合は、それに代わる強力な転換装置を用意する必要があると思います。を構築するうえでの基本的な視点、考え方についてお話ししました。具体的な制度や施策については、このあと各企業のみなさまから発表していただきます。そうなると、定年延長と再雇用とでは、何がしかしそれでも、定年延長にふみ出す場合は、以上、私からは、シニア社員の「評価・賃金」2024.324

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