エルダー2024年3月号
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を直視したうえで、「にもかかわらず」チームが向かっていきたい先、ありたい姿に近づく行動をとることを助けます。心理的柔軟性には次の三つの要素があります。これら3要素からなる「しなやかな行動」がとれることが、心理的柔軟性です。①受入れ・直視…たとえ困難があったとしても現実に直面する②行動・取組み…大切なことに向かって進む③気づき・軌道修正…その状況、その文脈で気づきを得て、役に立つ行動へ切り替えること三つの要素を自動車に例えるならば①ブレーキを外し、②行きたい方向に向かってアクセルを踏み、③ハンドルを動かして軌道修正する、といったイメージです。心理的柔軟性の①の要素を高めるうえで大切なことは、困難を避けるのではなく、困難を直視することです。いわば「不都合な現実にオープンでいること」が求められます。そして困難とは、実際に目の前で起きていることそのものではなく、自分のなかにある感情や思考であることがほとんどです。再雇用の高齢者の方が持っている「再雇用の自分が余計なことを言ってはいけない」という思考や、高齢者をメンバーに持つマネジャーが考える「高齢者の方にこんなに依頼をしてはいけないのではないか」という思いこみも、この心理的非柔軟な「ブレーキ」として現れます。このような思考や思いこみが現れ、避けようとすると、本当は試しに意見やお願い、そして確認してみればよいことでも、行動に移すことができなくなります。このとき「考えこんでしまって、自分でブレーキをかけているな」と、自分自身の思考に気づき、直視することが大切です。わたしたちは「これは無理だ」、「これはむずかしい」という思考が頭の中に浮かんできたとしても「にもかかわらず」役に立ちうる行動をとることができるからです。それはまさに「月曜日、会社に行きたくないなあ…」という思考があったとしても、「にもかかわらず」出社できたのと同じようにです。このように、ブレーキとなる思考や感情、思いこみがあったとしても、「できる行動から実行すること」、「やってみること」を、私たちは選択できるのです。行動を選択するために大切なことが、心理的柔軟性②の要素です。自身や組織にとって「大切なこと」を言語化し、そこに向かって役に立つ行動をとることです。先ほどの具体例では、まだキャリアが短いメンバーが、組織をよくするためのアイデアを持っていましたが「こんなことを言ってよいのだろうか」というブレーキが現れてアイデアを言うことができませんでした。しかしながら、組織にとって「大切なこと」に向かっていくためという確信が持てれば、勇気を持って言うことができるようになります。先程の例では「このチームでは、顧客満足向上を第一にしていると聞きましたので、私業務改善会議でのことブレーキがはたらく!ブレーキがはたらく!先月中途入社した私先月中途入社した私「大切なこと」が明確だから「大切なこと」が明確だから「役立つ」がわかる「役立つ」がわかる役立つ行動をとる役立つ行動をとる会社が大事にしている会社が大事にしている「顧客満足」を上げるために、「顧客満足」を上げるために、以前の職場で上手くいっていた以前の職場で上手くいっていた施策はこの職場でも役立つはず!施策はこの職場でも役立つはず!このアイデアは伝えたいこのアイデアは伝えたい前職で顧客満足向上した施策が参考になると思うのですが…入ったばかりでキャリアの短い自分が業務改善について意見してよいのだろうか言っても聞いてもらえないのではないかと、自分は思っているなぁ。そして、いま自分は発言せずに黙っている。こうして黙っていることは役に立っているの?※ 筆者作成2024.346図表3 心理的柔軟性が高いケース図表3 心理的柔軟性が高いケース受入れ・直視受入れ・直視気づき、軌道修正気づき、軌道修正  ②①③④    

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