エルダー2024年3月号
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人事評価における留意点る「個人評価チェックシート」の記録や社員からの納得ができなかった場合の記録などに基づき、「個人評価項目着眼点・評価尺度」という書式に評価を記入して、結果をフィードバックすることになっていました。裁判所は人事評価の内容決定については、「使用者の裁量的な判断に委ねられており、人事評価の適法性が争われた場合、使用者の裁量的な判断は尊重されるべきであり、その判断が上記の強行法規に反する場合や、就業規則などの労働契約の定めに照らして、是認される範囲を超え、著しく不合理であって濫用にわたると認められる場合でない限り、違法となることはない」として、使用者の広い裁量を認めました。このような判断基準によれば、強行法規違反となる事情が認められることは少ないと思われるため、就業規則を遵守した評価であるかぎりは、著しく不合理な評価のみが違法になると考えられます。このような基準に照らして判断された結果、①から④のいずれについても、使用者の人事評価の違法性は認められませんでした。なお、原告は、被告から人事評価の理由の説明や指導がなかったことを理由に、人事評価の違法性を主張していましたが、裁判所は「どのような場面でどのような言葉かけでもって部下に対する注意指導を行うかについては、評価者である管理職に裁量があるといえるから…(中略)…、Aと評価することができない理由となる具体的事実の指摘を評価者が行わなかったからといって…(中略)…、直ちに違法となるものではない」と判断しており、人事評価の内容を詳細に説明したり、指導を継続することまでは求めていません。3会業内容や社内の課題克服に向けた方針なども影響するものであり、非常に個別性が高いといえます。そのため、人事評価の適切さに対して裁判所が過度に介入することが適切とはかぎらず、裁判例の示したような使用者に裁量の余地を広く認める判断基準にならざるを得ないでしょう。目やその評価基準が定められている場合には、その範囲での裁量に限定されるという点です。また、一度定めた項目や基準を変更する場合には、就業規則の変更も必要になるでしょう。広範な裁量が認められるのは、就業規則に定められた文言から解釈できる範囲ということになるため、記載がない項目を加味したり、記載されていない事情を考慮して評価基準を拡張するようなことは許されないという点には留意する必要があります。は多くありませんが、実務的には裁判にまではならなくとも、どの程度までの裁量が許容されるのか判断することに悩む場面もあると思われますので、紹介した裁判例を参考に自社の人事評価をあらためて見直してみてください。社が人事評価を定めるにあたっては、事注意が必要となるのは、就業規則に評価項人事評価そのものの違法性が争われる事案51①「応援」②「創意・工夫・提言」支援の実効を上げるため、創意・工夫をして施策を立案・実施し、受持ちの実績向上に貢献した場合にはA、施策を実施したが、効果は不十分である場合にはB、施策を実施していない場合にはCとする③「業務知識」④「苦情・賞賛」項目評価基準※ 筆者作成業務繁忙時に必ず応援を行っている場合にはA、応援を行っている日がある場合にはB、応援を行っていない場合にはCとする高度な業務知識を有している場合にはA、通常業務をこなすための業務知識を有している場合にはB、業務知識が不十分である場合にはCとする賞賛があった場合にはA、賞賛と苦情があった、または何もなかった場合にはB、苦情があった場合にはCとするエルダー図表 当該裁判における評価項目と評価基準知っておきたい労働法AA&&Q

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