透き通った色を表現する「透胎七宝」を独自に実現住じにある畠山七宝製作所だ。二代胎た七し宝ぽ」という高度な技術を有し、っういうゅんのエンブレムなどが七宝で製作され、最盛期には60軒以上の工房があったが、その後、合成樹脂製品が普及したことで需要が減少。現在はわずか数軒となっている。その一つが、東京都荒川区南千せ目の畠山弘さんは、七宝製作の一連の技術に加えて、後述する「透と令和5年度「卓越した技能者(現代の名工)」に表彰された。東京七宝の製作は、現在もほとんど手作業で行われている。まず、プレスされた金属の土台を空焼きして油を落とし、酸化膜を酸で洗いとる。また、釉薬を均一に盛るために、すりつぶして粒子を揃える。そして、土台の凹みに釉薬を盛りつけ、乾燥させた後に焼成し、酸で洗う工程を1色ずつくり返す。東京七宝は土台の凹みが0・4㎜と浅く、異なる色の釉薬を一度に盛りつけると、色が混ざってしまうためだ。さらに畠山さんの工房では、気泡ができるのを防ぐため、一つの色を一度に盛って焼かず2回に分け、倍の手間をかけている。したがって、4色の製品であれば8回、8色の製品であれば16回焼成を行うことになる。美しい色を出すために手間を惜しまない姿勢がうかがえる。「溝が浅いのが、東京七宝の特徴といえます。そのため最もむずかしいのが、最後の工程である研磨です。研ぐのは0・05㎜で、それ以上研ぐと変色してしまいます。経験を重ねると、手の感覚で研ぎ加減をつかめるようになります」畠山七宝製作所は、畠山さんの父が七宝焼きの修業を経て1951(昭和26)年に設立した。子どものころから父の手伝いを通して、「きれいでおもしろい」と七宝に魅力を感じていた畠山さんは、大学卒業後、62釉薬を盛った土台を800℃前後の炉で焼く。同じ色を2回、さらに異なる色ごとに釉薬を盛って焼き、酸洗いをくり返すことで、美しい色を生み出す「心がけているのは、白をきれいに出すこと。白は汚れが目立ちやすいため特にむずかしいのです。白がきれいに出せると、ほかの色を引き立てます」
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