エルダー2024年3月号
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技術を継承するとともに新たな作品への意欲もppoucomhttps://www.tokyo-sh畠山七宝製作所TEL:03(3801)4844(撮影・福田栄夫/取材・増田忠英)i.っういう父のもとで本格的に修業を始める。「当時は仕事がたくさんあり、毎日夜11時ごろまで仕事をし、休みは日曜日だけという状況でした」そのころは、依頼された記念品や記章などに指定された色を入れるのがおもな仕事だった。その後、そうした仕事が減少していくなかで、畠山さんはオリジナルデザインのアクセサリーづくりを始める。その過程で身につけたのが「透と胎た七し宝ぽ」(プリカジュール)という技法だ。一般的な七宝は土台の上に釉薬を盛りつけるが、透胎七宝は土台の穴の空いた部分に釉薬を盛ることで、ステンドグラスのように透き通った色を表現する。透胎七宝を量産できる職人は畠山さんだけといわれている。「アクセサリー業者さんから依頼され、試行錯誤しながら独自の方法を編み出しました。治具を使わずに表面張力を利用し、焼き加減を調整しながら盛りと焼きを何度かくり返すことで実現しました」飽きっぽい性格だが、成功するまで粘るのは好きだという畠山さん。製品を手にした人から「すごくきれい」といわれるのが一番うれしいそうだ。一通りの技術を習得するには7~8年かかるという七宝。畠山さんは、伝統工芸技術の継承者育成を支援する荒川区の「匠育成事業」を利用し、後進の育成にも取り組んでいる。すでに一人の育成を終え、現在は娘さんが修業中で、さらに新たな弟子をとろうと考えている。「最近は注文の仕事で忙しいので、もう少し自分の作品をつくりたいですね。手にした人が、楽しい気持ちになれるようなものがつくれたらと思います」63荒川区南千住にある畠山七宝製作所。父の代から70年以上の歴史を持つ研磨する厚さはわずか0.05㎜。手先の感覚を頼りに研いでいく「これまで最も時間がかかった」という、葛飾北斎の浮世絵を模したエンブレム工程のなかで最もむずかしいとされる研磨。このときは木枠にのせて研いでいたが、指輪などは直接手で持って研磨する釉薬を盛りつけるやり方は、七宝が始まって以来変わらない。「ホセ」という竹製のヘラを使い、深さ0.4㎜のわずかな凹みに釉薬を均一にのせていくアクセサリーの製作が多い畠山さんの工房では、約200色の釉薬を扱うエルダー vol.337

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