■9ターバル内の行動をあまり睡眠にこだわらずに一人ひとりに合った最適なリフレッシュ法について考える必要があります。3生体﹁防疲御労の﹂三と大﹁ア疲ラ労ー感ムに﹂は、「痛み」、「発熱」、そして「疲労」があります。疲労は、私たちに休息の必要性を知らしめ、過剰な活動による疲弊を防御するための重要な生体警報(アラーム)です。日本疲労学会では、疲労を「過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態である」と定義しています。つまり疲労は、心身の活動によるエネルギーや栄養素の減少、代謝にともなう老廃物の蓄積、神経・内分泌系の生体維持機能の衰弱などにより、生体恒常性が乱れ活動能力が減退した状態と考えられています。労働現場では、普段の生活に比べ負荷が大きいことから疲労をより生じてしまいます。そのうえ、再び労働が行える状態に体調が戻る前に労働を再開していることも多く、これは生体防御のアラームを無視した行動を日常的にくり返していることになります。日本リカバリー協会による10万人の大規模調査の結果から、成人男女の約8割は、日常的に疲労感を抱えていることが明らかとなっています※2。労働現場では勤労者へのさまざまな疲労軽減の取組みがなされてきましたが、疲労感は過去25年で6割から8割へと増加しています※3。われわれは労働から生ずる疲労の軽減と合わせて、勤務間インターバル内の休養回復(リカバリ︱)による持続可能な好循環の維持が重要となります。ところで「疲労」と「疲労感」の違いをご存じですか。「疲労」は心身への過負荷により生じた活動能力の低下をさし、「疲労感」は疲労が存在することを自覚する感覚をさします。「疲労」の状態においては、それを自覚する「疲労感」がつねに一緒に存在することから普段は同義にとらえられています。そして疲労には、肉体的活動能力の低下をともなう「肉体疲労」と、精神的活動能力の低下をともなう「精神疲労」があります。肉体疲労では、身体の動きの鈍化という活動能力が低下した状態(疲労)と疲労の感覚(疲労感)が一致しやすく、自覚したときには休憩などによりこれに対処しています。一方、精神疲労による脳・神経系の活動能力の低下した状態(疲労)は自覚しづらく、さらにアラームである疲労の感覚(疲労感)を、責任感・使命感・高揚感などにより覆い隠して活動を継続しがちになります。このとき、本来一致しているはずの「疲労」と「疲労感」の乖■離■が発生します。この乖離が慢性化すると、生体恒常性の乱れの慢性化へと進行してしまいます。特に日本人の勤勉さや勤労に対する根強い義務感、社会的圧力などが慢性化を冗長させる要因にもなっています。さらに、疲労に対する教育の不足から、セルフコントロールやセルフケアのためのリテラシー不足も、課題解決を困難かつ複雑にしています。4先述休の養大サ規イ模ク調査ルにとよ休る養とモ、デ約ル8割の成人男女は、疲労解消できず負債として溜めこんでいます。①活動↓②疲労↓③休養というわれわれの日常サイクルのくり返しでは、疲労を解消できないということになります。そこで私は、①活動↓②疲労↓③休養↓④活力という四つをくり返す「休養︵リジェネレーション︶サイクル」を意識的に実践することを提唱しています(図表2)。活動に入る前の活力に意識を向けることで、結果的には生産性向上や欠勤・休業の防止につながるという考え方です。そこで活動能力の増進のためには、休養から※2 一般社団法人日本リカバリー協会「休養・抗疲労白書2023」※3 日本疲労学会「抗疲労臨床評価ガイドライン」(2011)エルダー特集心と体の「休養」を考える
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