用い、ベッドの上はできるだけ暗くする工夫をしましょう。寝室は一晩を通して快適な環境にすることが原則です。特に夏場はエアコンを使用し、一晩中快適な温度を保つようにしましょう。冬場は、寝具を利用し床内温度を適正化することで眠りを安定させることが可能です。その場合、一枚の掛け布団で適温を目ざすよりも、薄めの寝具を複数枚使用し、就寝中に調節可能にする方がよりよいでしょう。寝室の騒音は眠りを妨げますので、できるかぎり静かな環境に保つことをおすすめします。テレビやラジオをつけっぱなしで寝るのは、気づかぬうちに眠りを不安定にする原因となります。(3)嗜好品の摂り方飲酒は寝つきを改善する効果がありますが、アルコールは体内で代謝されアセトアルデヒドという物質に変化します。この物質はアルコールと反対に覚醒作用を示すため、むしろ眠りを不安定にし、途中で目覚める原因となります。このため、飲酒は適量にとどめ、できるかぎり早めの時間に済ませる必要があります。日本人はアルコールの代謝酵素の働きが弱い人が多く、この場合、アルコール代謝により長い時間を要するため、睡眠への影響はより深刻です。寝酒習慣はかえって睡眠を悪化させ、健康への悪影響も大きいことがわかっています。日常よく口にするお茶やコーヒーにはカフェインが含まれています。カフェインは覚醒作用があることから、夕方以降のカフェイン摂取は眠りを不安定にすることがわかっています。加齢によりカフェインの代謝能が低下してくると、これまでと同量の摂取であっても、眠りへの影響は強くなっています。カフェイン摂取量が多い場合、たとえ午前中の摂取であっても眠りに影響する場合があります。たばこに含まれるニコチンも覚醒作用を示す物質です。ニコチンも眠りを不安定にしますが、習慣的に喫煙しているとむしろ寝る前に一服しないとよく眠れないと感じる方が多いでしょう。これは、ニコチンの離脱症状(禁断症状)により興奮が高まっているせいであり、ニコチンを補充することで一時的に離脱症状を治めることができるためです。喫煙習慣をやめることで、長期的に眠りを安定化させるのに役立ちます。6上記確の保よをう妨なげ眠るりを不安定化させる生活習慣、寝室環境、嗜好品の摂り方を改善してもなお、睡眠休養感が著しく低く、日中の眠気がひどい場合には、何らかの睡眠障害が隠れている場合があります。高齢者で好発する疾患であり、夜間にくり返すいびき、日中の眠気や居眠り、睡眠休養感の低下などがおもな症状としてあらわれます。閉塞性睡眠時無呼吸では、加齢による上気道の筋力低下や肥満を一因として、睡眠中に気道が狭窄することで呼吸が一時停止し、血中の酸素が不足します。酸素不足になると覚醒反応が生じて呼吸は再開しますが、再び眠りにつくとまた呼吸が停止し、これを一晩の間に何度もくり返します。慢性的な酸素不足は、高血圧や脳卒中、心筋梗塞、心不全、糖尿病などさまざまな疾患を引き起こし、健康寿命を短くする原因ともなります。眠障害です。不眠症では、なかなか寝つけない、夜間に何度も目覚める、朝早く目覚めるなどの症状により、日常生活に支障(倦怠感や集中力の低下、日中の眠気、仕事の効率や学業成績の低下など)を生じます。高齢者の不眠は、先に述べた、睡眠の必要性が低下するにもかかわらず床の上で過剰に眠ろうとすることに加え、不適切な生活習慣・寝室環境・嗜好品の摂り方などが重なって発症することが多いことから、病態が悪化する前に、前述の習慣を改めることが有効です。なかでも、閉塞性睡眠時無呼吸は中年期以降、不眠症も加齢にともない発症率が高くなる睡睡眠障害も睡眠時間・睡眠休養感の2024.418
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