エルダー2024年4月号
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ないだろう」と思っていたところ、勤めていた不動産会社の支店長が「株式会社うぇるねす」を紹介してくれました。おもな業務はマンションの管理と清掃ですが、12年間マンション管理員の経験があったので仕事に対する不安はまったくありませんでした。ただ、それまでと大きく違ったのは、担当するマンションが毎日違うという点でした。代務員※という名称が職務の内容をよく表していると思います。働く場所が毎日違うのは緊張しますが、この緊張感が仕事の張り合いと認知症予防につながっています。私の場合は、週に2日から3日、仕事に行くマンションによって働く時間は異なりますが、翌月のシフトが早くわかるので、自分の都合に合わせた働き方が可能です。元気に働き続けていられるのは、働き方を選べるという点が大きいと思います。また、仕事の依頼や勤務場所への経路の確認、業務連絡などはすべてスマートフォンのアプリで行わなければならず、高齢者にとってはよい刺激となっています。仕事を続けていくうえで私が大切にしていることは何ごとも前向きにやっていくことと、仲間との交流です。マンション管理の仕事は基本的に一人で行うので孤独な作業です。だからこそ、仲間との交流が心の支えになります。社内では研修イベント「うぇるねすシップ」が定期的に開催されます。首都圏では1200人ほどの代務員が一堂に会して、清掃業務のスキルアップや現場の課題解決などを学びます。また、居住地域でエリア会を開き、現在は16人ほどの仲間と定期的に情報交流や意見交換をしていますが、このような交流の場があることが代務員のモチベーション向上につながっています。ほかの研修制度も充実しており、入社前の研修のほか、スマートフォンの勉強会もあります。入社後には「親ガモ」と呼ばれるコーチ役の働くマンションで実地研修を行います。「親ガモ」に採点をしてもらい、合格点が出て初めて現場での仕事をスタートできるのです。私もいまは「親ガモ」として新人研修にあたっていますが、人に教えることや評価するという点では旅行専門学校での講師の経験がおおいに役立っています。人生には無駄な経験というものは一つもないようです。きでした。新しい人に出会うことが多いいまの仕事は自分に合っていると思います。マンションには小さなお子さんから高齢者までさまざまな方が暮らしています。心をこめて業務をこなし、住んでいる方に快適な日々を送っていただくためのお手伝いをしたいと思っています。でも働いている方がいるのでまだまだがんばれそうです。健康づくりのためにも毎日1万2000歩を歩くことが目標です。マンションの清掃時は階段を何度も昇り降りしますし、日々の勤務先の移動でもよく歩いている方だと思います。あとは快食、快便、快眠と快トレの四つを大切に身体をケアし、毎朝体温と血圧を測定していますが、これはアプリに入っているので気楽に続けられています。味でしたが、最初の定年を迎えたとき、職業訓練校の園芸科で少し学んでから一層力が入るようになりました。ほかには大相撲観戦で、好きな力士の勝ち負けに一喜一憂しています。挨拶」を胸に秘めて、明日もまた新しい現場に向かいます。私は添乗員時代から人に接することが大好趣味はバラづくりです。若いころからの趣会社のモットーである「目を見て笑顔でご株式会社うぇるねすでは、日本各地のマンション管理員として多くのシニア人材が活躍している。「居住者の目を見て笑顔でご挨拶」を合言葉に、快適で信頼できるサービスの提供を目ざしている。生涯現役の職場が田中さんを待っていた。毎日働く場所が変わる緊張感とともに仲間との交流が活力につながる居住者との心のふれあいを支えに※  代務員……管理会社の常勤管理員の休暇、退職などにともない単発・長期で当該マンションの管理員として派遣される代行管理員72歳で働き始めて8年が過ぎました。90代高齢者に聞く41エルダー

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