法文の記載が若干異なりますので、整理すると図表1の通りになります。年後再雇用の嘱託社員が、①賞与に相当2定する期末・勤勉手当の支給がないこと、②夏季および年末年始休暇がないこと(有給休暇として扱われたこと)、③扶養手当の支給がないことは不合理であるとして事業者を訴えた裁判例(社会福祉法人紫■雲■会■事件。宇都宮地裁令和5年2月8日判決、東京高裁令和5年10月11日判決)があります。この判決の意義としては、支給されていなかった時期が労働契約法旧第20条適用時期とその後のパート有期労働法が改正および施行された時期にまたがっていたことから、一つの事件において、労働契約法旧第20条に基づく均衡待遇に関する判断だけではなく、パート有期労働法第8条に基づく均衡待遇や第9条に基づく均等待遇に関する判断もなされている点です。適用時期との関係で、パート有期労働法に基づく判断は、まだ多いとはいえず、同法第9条に基づく均等待遇の適用要件について判断した事例はほとんどありません。まず、均等待遇の適用に関しては、パート有期労働法第9条には「短時間・有期雇用労働者であることを理由として」との要件が明記されている点をとらえて、「処遇の相違が期間の定めに関連して生じたものであるというだけでは足りず、処遇の相違が有期労働契約であることを理由としたものであることを要するものというべき」と判断しています。処遇の相違が期間の定めに関連していれば、均衡待遇に関する規定が適用されるという判断は最高裁の判例でも確立していますが、均等待遇に関して要件が加重されることを明確にしています。そして、この裁判例において■■は、処遇の相違が、単に有期雇用労働者であることを理由としたものではなく、退職金の支給を受けたなど、定年後再雇用の事情が考慮されていることをふまえて、嘱託社員とその他の有期雇用労働者(臨時職員)においても異なる処遇になることから、均等待遇の規定は適用されないと判断されました。法第8条に基づく均衡待遇の規定については、適用があることを前提として、①職務の内容、②職務の内容および配置の変更の範囲、③その他の事情を考慮して判断されました。です。労働契約法旧第20条およびパート有期労働手当ごとの判断をまとめると図表2の通り定年後再雇用について判断した裁判例※ 筆者作成※ 筆者作成47エルダー図表2 当該裁判における均衝待遇に関する判断労働条件の種類期末・勤勉手当(賞与)夏季・年末年始休暇扶養手当図表1 「均衡待遇」と「均等待遇」均衡待遇均等待遇不合理か否か主な理由不合理ではない定年後再雇用は長期雇用を前提としていない不合理で、違法となる心身を回復する目的や国民的な習慣や意識により付与されるもの不合理ではない扶養手当は継続的雇用を確保する目的である対象となる前提条件待遇基本給、賞与その他の待遇のそれぞれ短時間・有期雇用労働者であること基本給、賞与その他の待遇のそれぞれ短時間・有期雇用労働者であることを理由としていること考慮要素許容されない差異①職務の内容② 職務の内容および配置の変更の範囲不合理と認められる相違③その他の事情①職務の内容② 職務の内容および配置の変更の範囲差別的取扱い知っておきたい労働法AA&&Q
元のページ ../index.html#49