エルダー2024年4月号
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なお、基本給部分は、正社員の約80%程度(期末・勤勉手当が支給されないことによる年収を比較しても約62%程度)であり、退職金として2100万円程度を受給し、嘱託社員は労働組合との団体交渉を経て、賞与の支給がないことを明記した内容の嘱託社員労働契約書が締結されていたといった事情もありました。夏期および年末年始休暇の趣旨について判断を示した点も特徴であり、「所定休日や年次有給休暇とは別に、労働から離れる機会を与えることにより、労働者が心身の回復を図る目的」や「年越し行事や祖先を祀るお盆の行事等に合わせて帰省するなどの国民的な習慣や意識などを背景に、多くの労働者が休日として過ごす時期であることを考慮して付与されるもの」という整理がされています。そして、このことをふまえたとき、この要請は嘱託社員にも等しくあてはまることを理由に、不合理な差異で違法であり、出勤日数に応じた賃金相当額の損害賠償の支払いを命じるという結論につながりました。本判決によって、定年後再雇用者と通常の有期雇用労働者の処遇について、相違なく同様の取扱いをしている場合には、均等待遇の規定が適用される可能性があることが明確にされたと考えられますので、留意が必要です。1労働基準法第11条には「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と定め、「賃金」に該当する場合には、通貨払いの原則、直接払いの原則、全額払いの原則などによるさまざまな保護を受けることになり、労働者にとって賃金を受領することは重要な権利と位置づけられます。そして、賃金は、労働条件のなかでも特に重要なものとして位置づけられており、その減額を合意により行う場合には、自由な意思による合意が必要と考えられています(山梨県民信用組合事件、最高裁平成28年2月19日判決)。されていないわけではありません。例えば、就業規則の不利益変更により、個別の従業員ではなく全体の賃金を下げるような場合については、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容できるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合に、その変更の効力が生ずると考えられています(大曲市農業協同組合事件、最高裁昭和63年2月16日判決)。なお、合意以外の方法での減額が一切許容このように、賃金に関する不利益変更につい就業規則に、減額の事由、その方法および程度などについて具体的かつ明確な基準が定められていることが必要とされることもあるため、自社の就業規則の規定を確認したうえで、慎重に行う必要があります。根拠規定がない場合は、本人を説得のうえ、自由な意思による同意を得る必要があります。採用するときに期待していただけの能力を有しておらず、能力不足と感じている社員がいます。ほかの社員としても、同等の賃金を得ていることに不服を感じているようなので、実際の労務提供の成果をふまえて賃金を減額したいのですが、可能でしょうか。Q2賃金の減額について業務を遂行するうえでの能力が不足している社員の賃金は減額してもよいのでしょうか2024.448A

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