食文化史研究家●永山久夫2024.454FOOD365アスパラガスは歴史の古い野菜で、すでに古代エジプトでは栽培されていたようです。日本には、江戸時代の後期にオランダ人によって長崎に伝えられています。当時は、オランダ語の発音からなまって「アスペラケー」と呼ばれていました。といっても、当初は食用にはほど遠く、もっぱら観賞用だったようです。株を庭先などに植え「おぉ! アスペラケー!!」といって、その成長の速さを楽しんでいたようです。食用種は、明治のはじめに北海道開拓使によって輸入されてから栽培が始まり、呼び名も「アスパラガス」になりました。アスパラガスの収穫は5月から6月に集中し、産地は北海道のほか、佐賀県や熊本県、福岡県、長崎県などが中心になっています。アスパラガスには、太陽光を浴びて育つグリーンアスパラガスと、土をかけ軟白させて育てるホワイトアスパラガスがありますが、最近では緑黄色野菜としての緑色の方が人気が定着しています。健康増進に役立つ、さまざまなビタミンがバランスよく含まれており、なかでもB-カロテンやビタミンCは、病気に対する免疫力を高め、風邪などから体を守る効果や老化を防ぐ作用などが期待できます。また、骨を丈夫にするビタミンKや肌の若々しさを保つビタミンEも豊富に含まれています。アスパラガスに含まれていることが、名前の由来となった「アスパラギン酸」を多く含んでいるのが特徴で、疲労回復やスタミナ強化、さらには体の老化防止の効果があることがわかっています。さらにアスパラガスの穂先には、ビタミンPと同じような働きをするルチンという特殊成分も含まれています。ルチンには血管をしなやかに、丈夫にする力があり、高血圧などの予防には最強の野菜といってよいでしょう。また、ビタミンB群の仲間の葉酸も含まれています。葉酸は、脳や血管の若さを保つ働きで注目されており、生涯現役で働き続けるうえでも役に立ちます。江戸時代は「アスペラケー」ルチンが丈夫な血管にアスパラガスで若返りましょう日本史にみる長寿食
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