有限会社橋本板金工業所TEL:048(955)5416(撮影・福田栄夫/取材・増田忠英)らび器用だが、営業が下手」という橋本さんは、塗装業や防水業などの仕事仲間の紹介で頼まれた仕事を堅実にこなすことで信用を築き、その信用によって仕事を徐々に増やして苦境を乗り越えた。「自分で責任を持って仕事をしてきたから、いまがある」と話す橋本さん。現在は、既存顧客への対応だけで忙しい状況だという。橋本さんの技術力は折り紙つきだ。埼玉県技能競技大会では1位の知事賞を3度獲得した。その後、さらなる技術向上を目ざし、東京都銅板加工技術研究会に入会。平らな銅板を叩いて丸く加工する「絞り」や、銅板溶接などの技術を磨いた。銅板を自由自在に加工する技術は、雨どいの変換継ぎ手の製作にも活かされている。また、埼玉県建築板金技能士会で国家試験の準備講習会の講師を約10年務め、2011(平成23)年からは蕨わ戸と田だ建設高等職業訓練校の指導員(現在は副校長)として、後進の育成にも努めている。「雨どいの継ぎ手のようなものが半日程度でつくれるのも、日ごろから職業訓練校で展開図の作成や板金での製作を教えているからだと思います。国家試験の前に勉強しただけでは、いざやろうとしてもなかなかできないでしょう」また、職業訓練校で教えてきたことで生徒たちから信頼を得られ、業界内での輪が広がったという。社員の田村隆幸さんも教え子の一人。橋本さんの技術や教え方に魅力を感じ、「なかば拝み倒して入社しました(笑)」と話す。そんな田村さんに橋本さんは「仕事を覚えて、どこででも通用する職人になってほしい」と期待を込める。技術の研けん鑽さんと後進の指導が部材の設計・製作に役立つ vol.338埼玉県三郷市で、父親の代から50年以上にわたり営業している橋本板金工業所工場の壁にきれいに整頓された工具類。几帳面な性格は母親譲りとのこと。さまざまな工具を使いこなす建築板金は「やろうと思えばいろいろなことができる、つぶしの利く仕事」と話す雨どいの変換継ぎ手を銅板で製作。取り替えコストの削減に貢献した「絞り」の技術を磨くために製作した一輪挿しとやかん。それぞれ銅板溶接を施しているが、その部分をさらに絞ることによって、溶接の跡はほとんどわからなくなっている銅板を叩いて丸く加工する「絞り」。均等に叩かないと厚みにムラが出てしまう。右は銅板で製作した洋風鬼瓦2011年から蕨戸田建設高等職業訓練校の指導員として、後進の育成に努めている。生徒に合わせたわかりやすい教え方に定評がある(写真提供:有限会社橋本板金工業所)63エルダー
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