エルダー2024年5月号
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つちかわれてきた経験値を重視しシニアパートナーにやりがいを健康経営に取り組み、ロコモ※度の高いシニアへの運動指導を実施④精神的不安…完全自動検査装置の導入などにより安心して作業に臨める環境づくり実際に行った具体的な改善の事例について、 いくつかご紹介いただいた。塗装後のドアミラーカバーを一つずつチェックして、箱に入れて出荷する作業では、以前は1時間に4回、ドアミラーカバーを入れる箱を前屈姿勢で持ち上げる作業があり、身体に負荷がかかっていた。そこで「からくりシューター」という自動で箱を動かす装置を設置することにより、前屈姿勢で行う作業そのものをなくすという改善を行い、高齢者や女性でも無理なく対応できる作業になったという。梱包工程においては、作業姿勢の改善に取り組んでおり、作業者の背丈に合わせて高さを調整できる昇降機能付きの作業台を導入し、作業者の身体にかかる負荷を軽減している。また、フルタイム従業員とパートタイム従業員とで、コミュニケーションにどんな課題があるかなどの洗い出しを行い、パートタイム従業員に長く働いてもらうための条件整備などについての検討も行っている。例えば、パートタイム従業員の場合、仕事を覚えるために責任者に質問をすることがあるが、1〜2回質問した後は、遠慮からか質問しにくくなるなどの精神的な負担があるという。そこで、仕事を覚えやすくするため、作業場所にモニターを設置し、作業手順をまとめた動画をつねに流すといった改善を講じている。これらの改善の取組みは、61歳のパートタイム従業員の協力を得て、3カ月間のトライアルとして実施し、良好な結果が得られているという。今後は、多様な人材が働けるライン構成の検討などを、塗装課として進めていく方針だ。「スマート工程の実現に向けた取組みについて、シニアパートナーからは、やりにくかった作業が改善されたという声があがっていますが、取組みは始まったばかり。まだまだこれからです」と話す林田課長。シニアパートナーに対しては、体力面の配慮だけでなく、仕事のやりがいも大事にして、スマート工程の実現を進めていきたいと考えている。鈴木課長は、シニアパートナーにしかない「経験値」の重要性を次のように話す。「車のつくり方は時代とともに変わってきましたが、その歴史や変化を現場で経験し、その時々に生じていた課題を改善してきたという知見もあります。それは、これからも高品質な車をつくり続けるうえで大きな力になります。できるだけ、同じ場所で長く働いてもらいたいと思っています」(鈴木課長)は従業員の活力向上や生産性の向上など組織の活性化をもたらし、業績向上につながる」と考え、健康経営にも取り組んでいる。安全・快適に働くことのできる職場づくりと、ハイリスク者に対するアプローチ、若年層への体質改善指導などによるヘルスリテラシー向上に戦略的に取り組んでいる。高齢者に対しては、腰痛などの有所見者やロコモ度の高い人を対象として、専門家による一人ひとりに適した運動指導や、生活習慣に関するアドバイスなどを行っている。もので、成果についてはまだ少し時間をかけてみていきたいとしている。に改善を進めてスマート工程を実現していく取組みのなかで、どのように多様な人財がそれぞれにあった働き方で仕事を継続していくのか、積極果敢な挑戦の今後が大いに注目される。同社では、「従業員への健康投資を行うことそして、すべての従業員が心身ともに健康でこれらの取組みは継続することが求められるすべての工程にかかる負荷を評価し、多角的2024.518※  ロコモ(ロコモティブシンドローム)…… 骨や関節の病気、筋力の低下、バランス能力の低下によって立ったり歩いたりする身体機能が低下すること

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