エルダー2024年5月号
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チェンジ・チャレンジ・チャンス仕事を両立し、「期間中は、とてもたいへんだった」という感想の一方で、「ものすごく勉強になった」とも話しているという。初めて学ぶ内容も多く、2人に大きな影響をおよぼしたようだ。税田社長は、「中高年齢層の学び直しで、経営マネジメントスキルを身に着けてもらえれば、将来的には役員などの道も拓けます。さらなるキャリアアップにつなげてほしい」と願う。ただ、この管理職育成の学び直しも、「強制的には行わない」のが同社の流儀だ。年齢と経験を積んだ社員に対しては、会社から「そろそろマネジメントの勉強もした方がいいのではないか」などと呼びかけはするものの、学び直しをするか、しないかは、本人次第。会社として策定した「人材育成計画」も、社員に強制するものではなく、「人材育成計画を動かしていき、自分のものにするのは社員本人です」と、税田社長は強調する。同社は、社員に主体的な学びをうながすため、「目的・目標の4観点シート」と「曼■荼■羅■チャート」を活用している。目的・目標の4観点シートとは、教育者の原田隆史氏が考案した目的達成のための手法「原田式メソッド」で使われるツール。「自分」と「他者」、「有形」と「無形」の四つのカテゴリーを軸に、目標を分析し、目標の意味づけをすることで、目標達成のためのモチベーションを上げるものだ。曼荼羅チャートは、目標達成の手段を可視化するためのツールで、米大リーグ「ドジャース」の大谷翔平選手が高校時代に活用していたことでも知られている。9×9の計81マスを用意し、まず、中心のマスに大きな目標を置く。そして、その周囲8マスに目標を達成するためのアイデア八つを書き出す。さらに、その八つのアイデアに基づき、アイデアを実現するための行動をすべてのマスに記入してシートは完成。この一連の作業により、目標を達成するために必要な行動が明らかになるほか、新しいアイデアを発見できたり、目標を関係者で共有できたりする効果があるとされる。同社では基本的に、次期の目標を立てる際、目的・目標の4観点シート、曼荼羅チャートを、部門ごと、個人ごとに作成。正社員のシートやチャートについては、同社が毎期策定している経営指針書に全員分を盛り込み、目標設定や目標達成への思いを共有しているという。「次年度に向け、自分の目標を自分で立てて、それを達成していくためにはどうするか―。それを考えることが、学びにつながっていく」との考えだ。「特に中小企業の場合、研修をする暇も時間もないということで、学び直しについては『余裕があればやる』というスタンスの会社が多いと思います。しかし、そんなことをいっていると、人は来てくれないと思います」と、税田社長は企業における学びの必要性を力説する。同社は毎期、売上げのおよそ5%におよぶ資金を研修費に投入。研修を充実させたことが、人材確保にもつながり、「『自分を成長させてくれる会社を選んだ』といってくれるスタッフもいます」ということだ。なお、同社では「働きやすい環境整備」の一環として、早くから定年を70歳に引き上げ、70歳以降も本人の希望があれば年齢の上限なく継続雇用できる制度を導入している。約130人のスタッフのうち約30人が60歳以上で、そのうち17人が70歳以上と、シニア層が活躍している。一方で、研修の充実なども功を奏し、20代、人が20代。「働きやすい環境、そして来てくれた人材の戦力化」という戦略が、「ダイバーシティ人材の活躍」として実を結びつつあるようだ。税田社長がよく口にするのが「チェンジ・チャレンジ・チャンス」という言葉。「変わることを恐れずに、チャレンジすると、チャンスが広がってくる」という思いを込めたものだ。年齢を重ねても恐れずに、学び直しにチャレンジすれば、チャンスは広がり、長く活躍していけるということだ。43エルダー30代の若手社員も増えており、正社員10人中6■〝〝学び直し〟

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