行ったSNS上での信用棄損行為やそのほかの事情を考慮して、懲戒解雇を行った事案において、当該従業員が懲戒解雇の無効および継続雇用されるべきであると主張して争った裁判例があります(学校法人札幌国際大学事件。札幌地裁令和5年2月16日判決。以下、「本件裁判例」)。懲戒解雇の効力と合わせて、定年後の継続雇用が問題になったのは、懲戒解雇は定年を迎える前に行われていますが、その後、その効力を争っている期間中に、定年を迎える時期も超えたことから、使用者が、懲戒解雇が有効であると主張することと合わせて、仮に、懲戒解雇が無効であったとしても定年を迎えたことにより労働契約が終了すると主張したといった事情があるからです。これまでの裁判例では、定年後再雇用をすることなく労働契約を終了させた場合において、それが解雇事由などのない不適切な判断であった場合であっても、必ずしも定年後の継続雇用が維持されるという結論にはなっていませんでした。例えば、東京高裁平成29年9月28日判決(学校法人尚美学園〈大学専任教員B・再雇用拒否〉事件)においては、定年後の再雇用拒否に対して、労働契約が継続している旨の主張をした労働者に対して、「労契法19条は、『従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす』と規定しているのに対して、本件における従前の契約は期間の定めのない労働契約であるから、新たに成立するものとみなされる有期労働契約の労働条件の特定は不可能であるところ、この点をその後に締結される可能性のある別の契約に係る本件規程の定めを利用することで補うことは、説明がつかないというべきである」として、定年後の有期労働契約が不特定であることを理由に、その成立を否定していました。本件裁判例においては、懲戒事由が懲戒解雇に相当するものであるとは認めなかったため、解雇が無効であった場合に迎えた定年の効力が問題となりました。使用者において、「本件就業規則10条1項本文は、大学教員は満63歳に達した日の属する年度の終わりをもって定年とする旨を定め、同項ただし書は、本人が希望し、解雇事由又は退職事由に該当しない者については、本件特任就業規程により、退職日の翌日から1年ごとの雇用契約を更新することにより満65歳まで継続雇用する旨を定めている」ことをふまえて、「原告に解雇事由があるとは認められず、その他退職事由もうかがわれないから、上記再雇用の要件を満たすものと認められる」と判断しています。そして、最高裁平成24年11月29日判決(津田電気計器事件)を引用して、「原告において、定年による雇用契約の終了後も満65歳まで雇用が継続されるものと期待することに合理的な理由があると認められ、原告の人事考課の内容等を踏まえれば、原告を再雇用しないことにつきやむを得ない特段の事情もうかがわれないから、再雇用をすることなく定年により原告の雇用が終了したものとすることは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認めることはできない」として、労働契約上の地位を認める判断をしました。継続しているとみなす労働契約が特定できないことを理由に、労働契約の成立を認めなかったところ、本件裁判例では、「労働条件は、本件就業規則、本件特任就業規程及び本件特任給与内規の定めに従うことになる」としたうえで、月額の賃金については、「月額24万円、与内規3条1項)ところ、原告は少なくとも月額24万円の限度で支払を受ける権利を有すると認められる」、賞与に相当する期末手当については、給与内規の定めに従い「6月分は給料月額の1・0か月分、12月分はその1・8か月分である(本件特任給与内規6条)から、原告は、6月に24万円、12月に43万2000円の支払を受ける権利を有する」として、継続雇用後の労働条件を特定することで、継続雇用後の労働契約存続を認めるという結論に至っています。この点、学校法人尚美学園事件においては、最高裁判例である津田電気計器事件と同様45エルダー25万円、26万円の3区分である(本件特任給知っておきたい労働法AA&&Q
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