エルダー2024年5月号
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一部の特定の社員に対して不当な動機や目的をもって行われていないかぎり、部長の指示がパワハラに該当するとは考えがたいといえます。しかしながら、パワハラに該当しないとしても、過重労働は会社の損害賠償責任を生じさせるおそれがあるため、ノルマの緩和または時間外労働の抑制のいずれかを適切に行う必要があります。部長が、部下に対して、他部署の営業社員よりかなり高い営業ノルマを課し、業務量を多くこなすよう指示しています。営業成績はよい結果が出ているものの、所属の社員から「部長から頻繁に残業命令が出るので、疲労が蓄積している。ここまでくるとパワハラではないか」との相談を受けました。こうした業務命令はパワハラに当たるのでしょうか。パワハラの類型Q2パワーハラスメントの定義残業命令はパワハラに該当するのでしょうかの考え方をしているため、目新しくはないともいえますが、定年後再雇用の拒否に対して、労働契約の継続を認めるという裁判例は珍しい事例です。ポイントとしては、定年後の再雇用に対する労働条件が就業規則や給与内規において、一定のパターンのみとなっており、個別具体的に決定するような内容となっていなかったことがあげられるでしょう。そのた1パワーハラスメントは、「パワハラ」と省め、賃金については最も低い水準であるとはいえ、労働条件を特定することができ、労働契約の継続を認めるという結論につながったものと思われます。解雇紛争中に定年を迎えたという特殊な事案ではあるものの、定年後再雇用を拒否したときに共通する争点に対する判断として参考になると思われます。略されるように、一般的にも浸透した言葉となっています。しかしながら、パワハラという言葉については、人によってとらえ方が異なっているように思われます。は、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること」と定義されています。「相当」な範囲を超えていることがパワハラに該当するためには必要とされています。個人の受け取り方によっては、業務上必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも、これが業務上必要かつ相当な範囲で行われているかぎりで、パワーハラスメントにはあたらないものと考えることができます。たる業務指示においていえば、残業して行うことの必要性であり、業務上の相当性とは、その命令の伝え方などの方法が適切に行われているか否かという点に着目するとわかりやすいでしょう。2パ攻撃、②精神的な攻撃、③人間関係からの切り離し、④過大な要求(例えば、業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)、⑤過小な要求(例えば、業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程労働施策総合推進法第30条の2においてこの定義においては、業務上「必要」かつここでいう業務上の必要性とは、残業にわワハラの行為類型としては、①身体的な2024.546A

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