度の低い仕事や仕事を与えないこと)、⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)といった六つの行為類型があげられます。質問をふまえてみた場合、かなり高い営業ノルマを課し、業務量を多くこなすよう指示していることや、頻繁に残業命令を行っているといった行為が、④過大な要求に該当する可能性があると考えられます。しかしながら、パワーハラスメントの行為類型については、一定の区別が可能であり、①から③までの行為類型については、原則として業務遂行上の発生しうる事象とは考えられないため、業務上の必要性が肯定されにくいと考えられます。他方で、④から⑥までについては、必要な業務上の命令や指導との線引きが必ずしも容易でない場合があります。参考になるのは、労働災害の認定に関して参照される「心理的負荷による精神障害の認定基準」において、パワーハラスメントについて「弱」、「中」、「強」の区別がなされており、これらのうち過大な要求について「強」に該当するのは、「業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことを強制する等の過大な要求」が反復・継続するなどし、そのような過大な要求を執拗に受けた場合があげられています。質問であげられている行為は、分類としては④過大な要求に該当する可能性がありますが、これらの行為の結果として、部門の営業成績はよいということであれば、業務上の必要性は肯定されうるものと考えられ、命令や指示の方法が精神的攻撃として不適切な方法になっておらず、反復・継続して執拗な程度にまで至っていないかぎりは、パワーハラスメントに該当するとまではいえないと考えられます。時間外労働への配慮3残業を含む業務命令が、単独ではパワーハラスメントに該当しないとしても、使用者は、労働者に対する安全配慮義務を負っており、労働者が職場環境の悪化などによって、身体または精神的な損害を生じないように配慮しなければならず、これに違反した場合は、会社としては損害賠償責任を負担するおそれがあります。安全配慮義務を尽くせていない環境においては、業務に起因する労働災害も発生しやすくなるでしょう。パワーハラスメントも労働災害の要因としてあげられていますが、そのほかにも多種多様な要因が心理的負荷による精神障害の認定基準には掲げられています。例えば、達成困難なノルマが課されたことや、1カ月に80時間以上の時間外労働を行ったことなどが、心理的負荷を与えるものとして考慮されています。パワーハラスメントに該当しないとしても、例えば、ノルマの内容が「達成は容易ではないものの客観的にみて努力すれば達成可能であるノルマが課され、この達成に向けた努力に向けた業務を行ったこと」は、「中」程度の心理的負荷とされており、さらに、時間外労働が月80時間を超えた場合も、「中」程度の心理的負荷があるものとされています。これら二つの心理的負荷が同時期に行われていた場合で、近接した時期に精神障害が生じた場合は、労働災害として認定される可能性があると考えられます。が行われていない場合であっても、達成が容易でないノルマの負荷と80時間以上の時間外労働が同時期に行われている場合には、ノルマの内容を変更するか、もしくは、時間外労働を減少させるように配慮しておくことが必要になると考えられます。したがって、たとえ、パワーハラスメント47エルダー知っておきたい労働法AA&&Q
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