〝あの作品〟 マンガ 『総務部総務課山口六平太』(作/林律雄、画/高井研一郎)心に残るこのコーナーでは、映画やドラマ、小説や演劇、音楽などに登場する高齢者に焦点をあて、高齢者雇用にかかわる方々がリレー方式で、「心に残るあの作品の高齢者」を綴ります東京学芸大学名誉教授 内田賢「総務部総務課山口六平太」は1986(昭和氏の急逝まで30年以上連載されたマンガです。単行本は全81巻に上ります。主人公の山口六平太が勤務するのは中堅自動車メーカーの大日自動車、会社のイメージは堅実ですが地味でダサく、トミタやニッタン、ホンネなど大手にはるかに及びません。しかし田川社長は「いまに見とれ!ツ何するものぞ!」の気概で会社を引っ張っています。一見するとジャガイモのような六平太は、何でも屋の総務部総務課で会社や社員、地域が抱える問題をていねいに解決していきます。若手と高齢者がチームを組んで「夢の車」(その名はロシナンテ)をつくろうと奮闘するストーリーがたびたび描かれています(第29〜33巻)。飲み屋で若手が六平太に「会社も会社のつくってる車も決して悪くはないんだけど、いまひとつときめきがないんです」とこぼします。六平太はそんな若手にさりげなくヒントを与えて考えさせベンます。一方、元工場長の現相談役やベテラン設計技術者、自動車整備工場の老経営者に話を持ちかけます。昔は夢を抱き挑戦者だった高齢者が若手とともに新しい夢を追いかけます。とはいえ、高齢者と若手の意識にズレもあります。元工場長の横山相談役は情熱のあまり自分が先頭に立って行動しようとします。そのとき、「相談役は何をなさりたいのですか?」、「幾つになってもお山の大将が似合うと思ったら大間違いですよ」と六平太が直言します。一瞬立腹した横山ですが我に返ります。その後、若手を相手に「必要なのは、みんなを引きずり回すお山の大将じゃなく仲間なんだってな」としみじみと反省します。高齢者には若手にはできない役回りがあります。横山は取締役会で夢の車プロジェクトの意義を社長以下の役員に熱弁、予算を獲得します。知識や経験が乏しく現実離れしたアイデアになりがちな若手のデザインにベテラン技術者が適切なアドバイスで助け船を出します。新開発エンジンや車両試験装置の使用を巡って会社が一番力を入れている新車(キーウィ)開発チームと衝突します。今度は若手が情熱で問題を解決します。高齢者の知恵を授ければ若手や中堅は大きく成長します。一方、ジェネレーションギャップの存在も無視できません。将来の大きな収穫が期待できるのにチームワークが崩れては組織にとって大きな損失です。両者の間に入り、それぞれのよさを引き出す触媒となる人物も欠かせません。このマンガに登場する高齢者はみんな、輝きを取り戻します。山口六平太がその触媒となっているのです。53エルダーⒸ林律雄・高井研一郎/小学館Ⓒ林律雄・高井研一郎/小学館最終回61)年に雑誌『ビッグコミック』に登場後、高井のの高高齢齢者者
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