エルダー2024年5月号
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―アシストスーツは、働く高齢者の負担軽減という視点からも期待が集まります。高齢者による活用状況はいかがでしょうか。―「高齢者が抵抗感を感じている」というのは意外でした。高齢者のなかには足腰が弱くなったので引退したい、という人もいます。企業にとっては健康で長く働いてもらうには有効なツールだと思います。(聞き手・文/溝上憲文撮影/中岡泰博)体の負荷を減らすことができれば長く健康に働くことにつながる家業であるぶどう栽培を継いだある方飯田 は、剪定や袋がけ、収穫など、腕を上にあげて行う立ち仕事が多く、10分ほど作業をするだけで、腕が疲れてしまい、1日中作業をしても、実質的な作業時間は半日程度になってしまっていたそうです。そこで、上腕保持型のアシストスーツと立位保持型のアシストスーツの2種類を使い始めたところ、1日中作業ができるようになり、作業効率が大きく向上したそうです。「先代が負荷の強い作業を続けて、大変な思いをしているのを見てきたので、自分は健康で長く働き続けたい」と、いまも2種類のスーツを使っています。このように、上腕保持型、立位保持型の2  種類のスーツの併用で高い効果が生まれている一方で、例えば収穫したものを持ち運ぶ場合は、腰部補助型のスーツが最適です。つまり、同じ業種でも仕事の内容によって体に負担のかかる部位が異なれば、使うアシストスーツも変わってきます。それを実感してもらうには、やはり体験することが大切なのです。協会が行っている出張体験会は、基本的に報酬をいただくことはありません。交通費をいただく場合もありますが、場所を提供してもらえれば出張して開催しますので、興味のある方はぜひお問い合わせください。飯田 若い方から高齢者まで幅広く使ってもらっていますが、実際に「使いたい」という声は、高齢者よりも若い人が多いですね。高齢者のなかには「いままでの仕事のやり方を変えたくない」という意見もあり、アシストスーツを着けることに対する抵抗感もあるようです。体験会でも実際に試して、購入するのは若い男性が多いです。その便利さを実感することができれば、利用者は広がっていくと思うので、いかにその便利さを伝えていくかが課題になっています。アシストスーツは、中小企業を中心に、飯田 「もし腰痛がなかったら、もっと長く働けていたかもしれない」と感じている高齢者の方は多いと思います。協会に加盟する9社のアシストスーツにはさまざまな種類がありますが、共通しているのは腰のサポートです。実際に、腰痛を抱えながら働いている人は大勢いらっしゃいます。腰痛になると作業効率も落ちますし、休みが必要になることもあるでしょう。場合によっては腰痛対策のためのコストもかかります。なにより年齢を重ねてもいつまでも元気で過ごすには、勤務中の負荷をどう減らしていくかが大切です。アシストスーツは体への負担を減らし、健康寿命の延伸や長く働き続けるために有効なツールです。導入することで働く人たちの健康を守り、それが楽しく暮らしていくことにつながると信じています。2024.54一般社団法人アシストスーツ協会 代表理事飯田成晃さん

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