エルダー2024年5月号
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全国各地でモニュメントの施工も手がけるれを石材に転写してノミで手彫りすることができる、希少な存在だ。「手書きで手彫りした文字には、機械にはない手作業ならではの味があります。いまだに納得のいく字はなかなか書けませんが、それでは仕事が進まないので、石材に写した文字をカットする際に修正を施します」現在は、手彫りの仕事はほとんどないが、以前はその評判を聞きつけて、県外から依頼が来ることもあったそうだ。そして、もう一つはモニュメントの施工である。彫刻家などから依頼を受け、全国各地で石材を使った造形品の製作を手がけてきた。「作家が構想した立体造形を、その手足となって実現させるのが私の仕事です」秋山さんは全国の石材の産地を熟知しており、作家が求める石材の調達・加工をになう。また、依頼時点で使用する素材や寸法などは決まっているものの、実際の構造などは施工業者に託される。耐震性など安全性を考慮した施工を行うのも秋山さんの役割だ。そうした技術の基盤となったのが、墓石の耐震施工である。秋山さんは、強い地震でも倒れない施工法を70年代から追求してきた。「従来は墓石をセメントで接着する工法が一般的でしたが、硬いもの同士だと上の石が踊り出して落ちてしまいます。そこで、ビルの免震にも用いられるゴムに着目しました。ただ、普通のゴムでは重さに耐えられないため、滑りにくいゴムを開発して挟むようにしたところ、震度6強程度まで耐えられるようになりました」業界では分業が進むなか、石材の手配から加工、揮毫・彫刻、そして施工まで、総合力で対応できるのが秋山さんの強みといえる。 62研磨機で磨いた黒くろ御み影かげ石いしは、鏡面のような美しさ。面が平らになっているかどうかを定規を当てて確認する。黒御影石をきれいに磨けたら一流だという「この仕事のやりがいは、自分たちの手がけたものが末永く残ることです。それだけに、いい加減な仕事はできません」

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