エルダー2024年6月号
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■■「ものづくりにずっとたずさわってきたこともあり、やはりメーカーで働きたいという思いがありました。日野精機の強みの一つに、必要な部品を材料からつくる『ダイキャスト』という工程があり、その機械加工や精密板金加工、組立加工のラインまで持っているのです。『この会社は何でもつくれる』という魅力を感じました。また、面談の際に福■田■弘■社長から『発想無限大』をキャッチフレーズにしていることを聞き、その考えにも強く惹かれました。会社が求めていた『品質管理』についても、すでにISOも取得しており、その運用も含めて、これまでの経験を活かして貢献できると思いました」金武さんのものづくり一筋のキャリアと品質管理業務の経験は、まさに同社が求めていた人材であり、「人柄もすばらしい」(安藤取締役)ことから採用が決まり、2019年12月付けで同社品質保証室に着任した。品質保証室の業務は、「品質管理」と「品質保証」の二本の柱からなる。品質管理は、生産した製品について、製品をつくるための材料の受け入れ検査、出荷時の検査など、製造にかかわる検査業務となる。一方の品質保証は、出荷した製品に不具合があった場合の顧客対応やISOの対応が中心となる。金武さんが入社して一年ほど経ったころ、「ちょっとまずいな」と危機感を覚える事態が起こったという。同社では、社内・社外問わず不良としてあげられた製品をすべて帳票に記載し、その件数を出しているが、2019年の一年間で不良件数が約500件だったのに対し、2020年は770件と、200件ほど急増したのだ。新工場の稼働がその要因の一つと考えられるが、金武さんはそれ以外の大きな要因を感じたそうだ。「2019年からの3年間は、『品質改善活動』を掲げて取り組んでいたのですが、改善というよりは現状把握にとどまっており、現場任せになっているようにも見えました。そんななかで不良が急増したデータが出たこともあり『非常にまずい』と感じたのです」不良の急増を受け、同年から金武さんが責任者として品質保証室の室長に就任。責任者となった金武さんは、まず製造現場のそれぞれの工程のどこに弱点があるのかを明らかにしようと考えた。精密板金、機械加工、塗装、ダイキャストなど、各工程における不良の発生要因の洗い出しを行った。「それぞれの工程において弱点がわかれば、各工程のなかで具体的にどの作業に着目して改善すればよいかがわかるようになります」(金武さん)2022年にはさらに50件減と、不良件数が目に見えて減少した。しかも、当初掲げていた3年間の「品質改善活動」の対象ではなかった製品にも改善活動の幅を広げて取り組んだ結果だそうだ。「入社後、社内の不良の発生原因や事象を数年間さかのぼって分析してもらい、それを社内に展開し、不良率の低下に大きく貢献してくれました。また、不良発生時のアクションも早く、取引先にすぐに駆けつけて対応するなど、品質保証担当者の心構えなども含めて、若手社員の見本となるなど、育成にも大きく貢献しています」と話す。3年以降は不良発生件数が上昇傾向にあることが課題になっているという。金武さんは今後の対策・方針について次のように話す。「発生率という意味では2022年の水準を維持できているのですが、業務の拡張などにより発生件数は増加傾向にあります。年間の発生件数を示して改善をうながすだけではなく、例すると、2021年は前年から100件減、安藤取締役は金武さんの仕事ぶりについて、一方で、業務の拡張などにともない、202特集即戦力となるシニア人材の確保へ25■エルダー品品質質管管理理とと品品質質保保証証のの責責任任者者ととししてて不不良良数数減減少少をを実実現現

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