■■〝学び直し〟への意識「50研修」で醸成する「第一歩」へ背中を押す――〝学び直し〟での会社の役割成果をあげつつある東京海上日動版LSUだが、同社にとってはミドル層社員向けの研修体系の一部であり、40代・50代の社員に学び直しや自己研■鑽■の機会を提供する取組みは、ほかにも重層的に行われている。まず研修体系の第1ステップとなるのが47歳に到達した社員を対象としていることから「47歳研修」と呼ばれ、長く実施されてきた「人事制度説明会」だ。研修には47歳を迎えた全社員が参加し、ミドル・シニア向けの人事制度に関する説明が行われる。年金や退職金に関することや、セカンドライフ支援制度(早期退職等)など、いわば「今後の人生のために、知っておくべきこと」を学ぶ場となっている。次のステップが「キャリアデザイン50研修」。以前は、47歳研修と同様、50歳研修を必須で実施していたが、「キャリア選択は自律の時代。全員に一律の研修を受けさせることはやめ選択制としました。いまは、今後のキャリアに向けて、まだ一歩をふみ出せていない人、自分の取組みでは足りないと感じている人に向けて、研修を行っています」(山本室長)研修の対象となるのは、50〜57歳の社員(2024年度より50〜59歳に拡大)。毎年、希望者を募り、各回定員20人で年8回、計約160人が参加している。各回とも、4時間の研修2回で構成。1回目は、自分を理解すること、内省をうながすような内容が中心で、例えば「欲求」について考え、「自分は何をしたいか」の原点に立ち返ったり、自分の能力、経験の棚卸しを通じ、「自分に何ができるか」を考えたりするそうだ。2回目の研修は、1回目の2週間後に実施される。1回目から2週間の時間をおき、その間に「自分が今後、何をしていきたいか」などを考える時間を設けているのがポイントだ。2回目の研修では、考えたことをふまえアクションプランを作成する。「『まずは最初の一歩から』、『小さな目標からでも始めよう』ということで、アクションプランを作成します。現実として、何から始められるかを考えるきっかけになればよい」(山本室長)と、研修のねらいについて話した。東京海上日動版LSU、キャリアデザイン50研修はいずれも、受講者から好評を博しているが、「いま、受講している人も、社員の分母からすれば決して多いというわけではありません。もっと会社のなかで、リスキリング、学び直しの裾野を広げてムーブメントにすることが課題だと思います」(山本室長)山本室長自身、キャリアデザイン室を運営するにあたり、「自分も学び直しをしなければ」と考え、キャリアコンサルタントの国家資格取得に挑戦。専門機関の講習会に参加し学びの輪に入るなかで、自ら費用をかけ、時間をかけて学んでいる人の多さに、刺激を受けたという。「私たちの世代、少なくとも入社当時の私には、勉強の機会や研修は会社が与えてくれるもので、会社がレールを敷いてくれるという感覚がありました。いまでは社内にも自ら学んでいる社員はたくさんいますが、会社全体で学び直しの大きな流れをつくっていく必要があると感じています」(山本室長)社内に〝学び直し〟の文化を根づかせるために、大切だとするのが「きっかけづくり」。キャリアについて考え、学び直しのきっかけにもしてもらおうと、同室はこのほど、同室社員によるキャリア相談をスタートさせた。山本室長は、「キャリア自律ということで、『自分で考えるべきだ』という考え方もあるかもしれませんが、スタートはやはり、背中を押してあげることが大事」と強調する。会社が背中を押すことで、「生涯現役につながるような意識をもってもらいたい。社内で『これからも、しっかりがんばっていこう』という人たちを、1人でも多くしたい」という思いだ。43エルダー〝〝学び直し〟
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