エルダー2024年6月号
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ん。また、定年後の継続雇用とは異なるため、より65歳までの継続雇用が保障されるわけでもありません。このように、自社で定年を迎えた労働者の継続雇用であるか、それとも、他社で定年を迎えた後に採用した高齢者雇用であるのかという違いは、65歳までの継続雇用や無期転換権の適用除外が可能であるかといった点に相違があるため、まったく同じような取扱いをしていくことが適切とはかぎりません。他社を定年退職した高齢者を雇用する場合には、有期雇用契約の更新基準や更新に向けた評価、面談などについて、継続雇用してきた労働者以上に気をつけておく必要があると考えられます。手信託銀行を定年退職した労働者(入社2大時66歳)が、ハローワークを通じて入社した企業において、契約を合計3回更新して、通算3年2カ月の間、有期雇用契約を継続していたところ、社員の若返りを図りたい旨を口頭で伝えたうえで、担当していた業務への社内からのクレームがあること、担当業務が実施されていなかったこと、居眠りおよび年齢を理由として雇止めを行う旨を通知したところ、これに不服をとなえて訴訟に至ったという事案があります(東京地裁令和3年2月18日判決)。他社を定年退職して入社してきた有期雇用の労働者ですので、高年齢者雇用安定法による保護対象ではありませんが、通常の有期雇用契約と同様に、更新に対する期待が合理的であるか、反復して更新されており無期雇用の労働者と社会通念上同視できる場合には、雇止めについて、有期雇用契約の継続を主張することができます。ただし、雇止めに客観的かつ合理的な理由があり、社会通念上相当である場合には、労働契約は期間満了をもって終了することになります(労働契約法第19条)。この事件では、採用時の求人票には、「契約更新の可能性あり(原則更新)」と記載されており、年齢による更新上限や定年制の規定がなかったうえ、年齢も70歳に至っていないという事情がありました。また、原則更新との記載を打ち消すような、更新上限や最終更新時期、業務遂行状況を評価したうえでの雇止めの可能性などについて具体的な説明も行われていませんでした。これらの事情を理由として、裁判所は、「原告において本件労働契約の契約期間の満了時(平成31年3月31日の満了時)に同契約が更新されるものと期待することがおよそあり得ないとか、そのように期待することについておよそ合理的な理由がないとはいえず、本件労働契約は労働契約法19条2号に該当する」と判断し、雇止めが制限されると判断しています。合理的な理由と社会通念上の相当性が必要となるのですが、裁判所はその判断をする前に、労働者の期待について、「原告が、平成31年3月31日の満了時に同契約が更新されることについて強度な期待を抱くことにまで合理的な理由があるとは認められず」という理由をつけ加えています。労働契約法第19条2号の要件においては、合理的期待の有無であって、その程度は判断基準とは直接関係はありません。にもかかわらず、裁判所が「強度な期待を抱くこと」について合理的な理由はないと触れているのは、雇止めにおける客観的かつ合理的な理由および社会通念上の相当性の判断基準を低く設定する意図があったものと考えられます。の不備がさまざま指摘されたうえで、「本件労働契約は、労働契約法19条2号に該当するものの、被告が原告の更新申込みを拒絶することが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないとはいえないから、原告の更新申込みを被告が承諾したものとはみなされない」として、雇止め自体は有効であると判断して、労働者側が敗訴しています。したがって、雇止めに関して、客観的かつ実際、この事件では、労働者による業務上この裁判例からは、他社を定年退職した高高齢者に対する雇止めに関する裁判例4565歳未満であっても、高年齢者雇用安定法にエルダー知っておきたい労働法AA&&Q

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