い状態を整えたとしても、部分的な不利益変更があるかぎりは、就業規則の変更には合理性が必要となると考えられており、ほかの条件の引上げは③変更後の就業規則の内容の相当性において考慮されるにとどまります。また、近年で重視される傾向にあるのは、④労働組合などとの交渉の状況です。労働組合がない場合には、労働者たちに対する説明会の実施や労働者から選ばれた過半数代表者との協議などがこの要素として考慮されることがあります。さらに、⑤その他就業規則の変更に係る事情としては、社会一般の状況や代償措置の内容、その他の労働条件の改善状況などが含まれると考えられています。回は、特殊業務手当という手当を廃止す2今るために、基本給などの昇給措置をとり、廃止にあたっては経過措置として20%ずつ実施した事案において、賃金減額の不利益変更が有効と認められた事案を紹介します(東京地裁立川支部令和5年2月1日判決)。当該事案は、病院を運営する法人において、精神病棟に勤務する職員のみに特殊業務手当が支給されていました。その理由は、過去の制度において、精神病棟に執務することの負担を考慮して、支給するものとされていたからでした。他方で、現在では、精神病棟のみならず、一般病棟においても精神病患者を受け入れているなど、かつてほどの相違がなくなっていたことから、特殊業務手当の廃止を決断するに至ったという背景があります。また、約7年間経常収支が赤字の状態が継続しており、給与制度の適正化を含む取組みにより黒字化や繰越欠損金の削減を図ることが、厚生労働大臣より求められている状況から、労働条件変更の必要性が肯定されています。なお、特殊業務手当について、4年の経過措置で廃止すること(1年25%ずつの削減)を提案していたところ、労働組合との交渉の結果、5年(1年20%ずつの削減)に変更したうえで、地域手当や基本給などほかの賃金項目の引上げなどにより不利益性を緩和した結果、賃金変更の合理性が肯定されるという結論になっています。なお、多くの裁判例において、賃金の不利益変更については、「高度の必要性」がないかぎり、有効とは認められにくかったのですが、この裁判例では、「高度の必要性」はなくとも変更の合理性を認めたという点に特徴があります。そのような結論を導いた背景としては、精神病棟の職員のみに支給すべき事情が失われていたこと、減額の幅が最大でも3・92%程度にとどまっていたこと、労働組合との協議が2カ月という短期間に5回と多数回行われたうえ、協議以外の場においても交渉を行い、双方の条件を調整するための提案を行っていたことなどが考慮されています。なお、この事案では、労働組合は、提案された内容に対して賛成しておらず、最終的に労働組合と合意ができたわけではありませんでした。るにあたって重要な事情が網羅されているといえそうです。就業規則変更のプロセスにおいて、労働組合との協議のなかで提案を修正するなどして合理的な条件を見出すほか、短期間で実現する必要がある場合にはスピード感をもって回数を重ねることも意義がありそうです。また、全体の従業員について不利益変更後の賃金額を試算して、その結果を見たときに最大の減額幅(3・92%)が把握できていたという事情も重要でしょう。いという目的だけをもって、不利益緩和措置や減額にともなう従業員に生じる不利益の程度が試算できていなかった場合には、このよこれらの事情は、就業規則を不利益変更す仮に特殊業務手当を削減しなければならな手当廃止と経過措置による不利益変更47ううなな結結論論ににははななららななかかっったたとと思思わわれれまますす。。エルダー知っておきたい労働法AA&&Q
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