備えとして行っていたことは特にない起業に向けて準備していた副業をしていた副収入を得るために準備していた転職に向けて社外での活動に取り組んだ定年後については極力考えないようにしていた人脈を広げるよう努めた定年後の具体的なキャリアプランを計画していた定年後の具体的な業務を計画していた専門性を広げるために努力していた仕事のやり方を見直していた専門性を深めるために努力していた職場メンバーと、良好な人間関係を築けるよう心掛けていた定年後の過ごし方について家族と話し合った仕事に対する考え方を変えていた組織内影響力発揮の見通し自己効力感+(自分のやり方でできる)仕事による成長実感社会貢献・社会的意義のための計画を共有し、支援を受けることができるなどの効果が考えられます。組織側にとっては、パフォーマンスの向上や経験や知識の共有、組織全体の活性化などの効果が期待できます。シニア社員のパフォーマンスについて、「定年後再雇用において躍進している60代にはどのような特徴があるのか」を分析しました。その結果、仕事観・キャリア意識において共通する傾向として、①「社会の役に立つ仕事をしている」、②「今の仕事で成長を実感している」、③「自分のやり方で仕事をしている」、④「組織に影響力を発揮できている」の4点が明らかになりました(図表1)。特に注目すべきは、2番目にあげられた「仕事を通じた成長実感」です。定年後再雇用のシニア社員については、これまでつちかってきた知識やスキルをどのように活かすかや、世代間の知識の継承に焦点があてられがちですが、実際には躍進するための鍵は専門的な能力を〝発揮〟することよりも、〝さらなる成長〟にあることが示唆されています。シニア社員との面談では、〝今後も成長する個人〟として、希望や目標を確認し、仕事を通じた成長機会を共有することが有効です。そして、そのやり方については、シニア社員の意向を尊重し、組織への影響を期待しながら伝えることが大切です。定年後のさらなる躍進に向けて、定年前面談や定年後再雇用面談は非常に重要です。しかし、最近では定年後再雇用があたり前のようになり、定年前面談が単なる就業継続の希望確認にとどまるケースもあります。調査結果では、図表2に示されているように、「定年後再雇用に備えた事前準備」についてたずねたところ、全体の約4割が「備えとして行っていたことは特にない」と答えていました。前項でも見てきたように定年後も躍進してもらうために、今後のキャリアをどう考えているのか、選択肢はどのようなものがあるのか、会社としてはどのような期待があるのかなどを提示しながら話合いを行うことは非常に重要です。シニア社員の思いをよく聴き、早めに準備行動に移すことは、組織とシニア社員の両方にとって有益な結果となるでしょう。冒頭で紹介した企業の課題「モチベーションの低さ」、「パフォーマンスの低さ」への解決にも有効であると考えられます。躍進して働いている60代の傾向定年前面談の重要性シニア社員を活かすための面談入門60代の躍進行動エルダー〈仕事の意識転換〉〈家族と話し合い〉〈職場メンバーとの良好な人間関係構築〉→7割がしていない専門性を深める・広げる2割程度4割弱が何もしていない49出典: パーソル総合研究所・法政大学大学院 石山研究室「ミドル・シニアの躍進実態調査」(2017年)図表1 60代の躍進行動に影響を与える要因+++図表2 定年後再雇用に備えた事前準備(%)40.030.330.329.729.728.328.320.00.0出典: パーソル総合研究所・法政大学大学院 石山研究室「ミドル・シニアの躍進実態調査」(2017年)16.316.320.320.319.719.719.319.314.314.313.313.313.313.310.010.09.79.736.736.76.06.03.73.7
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