知っている60歳代ほど、介護をになう子どもは就労を継続することができると考えている者も多くなっている。同様に、自分の介護に関して子どもと話し合っている機会が多い60歳代ほど、介護をになう子どもは就労を継続することができると考えている者も多くなっている。つまり、自分の介護をになう子どもが就労を継続することができるかどうかについては、介護保険制度の仕組みの知識、あるいは、自分の介護について、どの程度子どもと話し合っているか、いいかえれば、子どもとのコミュニケーションと密接な関係にあることがうかがわれる。4「求仕め事らとれ介る護の両立支援」の整備らないだけではなく、「知っている」者の多くが「ある程度知っている」にとどまっており、「介護保険制度の仕組みに関する知識」が十分であるとはいえない状況にある。加えて、60歳代の9割弱が、自分の介護について子どもと話し合っていない。つまり、自分の介護について、子どもとのコミュニケーションが十分にできていないことを表している。こうした結果は、60歳代が大介護時代を乗り切るために、まだ、十分な準備に取りかかっていないことを表している。しかしながら、大介護時代を乗り切るためには、60歳代自身だけが準備するだけでなく、その子どもも準備に取りかかる必要がある。そのためには、60歳代の親を持つ子どもが介護保険の仕組みに関して知識を持ち、介護について親と話合いを行うことも重要である。さらに、社会全体で、とくに、企業においては、従業員の介護に備えて、「介護と仕事の両立支援の構築」が求められる。仕事と介護の両立の課題は、女性だけの問題ではなく、男女共通の課題であると同時に、当該層は企業経営をになう中核人材でもある。こうした中核人材が仕事と介護の両立に困難やストレスを感じたり、仕事と介護の両立が困難となることで離職に至ると、企業としての損失はきわめて大きなものとなる。したがって、従業員の介護の実態や仕事と介護の両立にかかわるニーズを的確に把握し、仕事と介護の両立を支援することが、企業経営としてもきわめて重要な課題となる。介護の必要が長く続くことを考えると、仕事と介護の両立支援では、育児への支援とは異なり、長期間の休業による対応を前提とするよりも、通常の働き方を改革してワーク・ライフ・バランスを実現できる職場としたり、半日単位や時間単位で利用できる介護のための休暇制度や短時間勤務などの柔軟な勤務形態の整備をすることで働きながら介護を行うことができる仕組みを構築することが重要である。縮も大きな課題であり、そのためには、職場の管理職の管理行動の改革が必要不可欠である(詳しくは、大木栄一・田口和雄(2010)労働時間管理ム」『日本労働研究雑誌』No.596を参照)。仕事の計画能力が欠如している上司、無駄な仕事を指示する上司ではなく、残業前提に仕事の指示をする、評価を行う際に残業時間の長さを考慮するような時間管理能力が欠如している上司の下で働く従業員ほど、実残業時間が長くなっている。つまり、仕事の計画と配分の管理行動より、部下への時間管理行動が適正に行われないと残業時間は長くなりやすくなるということである。さらに、働く時間(とくに、残業時間)の短賃金不払残業職場の管理・働き方賃金不払残業発生のメカニズ「」「「」と「」・※ここで取り上げた報告書の執筆に際して、JEEDの鹿生治行上席研究役から協力を得ました。記して謝意を表します。55エルダー60歳代の5割弱が介護保険制度の仕組みを知特別寄稿「介護が必要になる従業員の親」からみた「仕事と介護の両立支援」の課題
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