(聞き手・文/溝上憲文撮影/中岡泰博)キャリア自律支援に重要なのは会社の風土や文化を活かした取組みであることを目的に2年前から取り組んでいます。具体的には、中小企業や自治体が抱える課題の解決に取り組むというもので、例えば、佐賀県のある自治体が「ふるさと納税10億円を達成したい」ということで、ソニーの社員がプロジェクトに参加し、見事に達成したという事例もあります。サラリーマンですから数値目標があるとますます意欲がわくようです。これも手挙げ式で公募していますが、参加可能なプロジェクトは1年間に4〜5件程度。応募者が多いため、参加するための競争率は数倍になります。シニアインターンシップの参加者から大塚 は「外部で自分の能力がどの程度通用するのかがわかった」、「これからの選択肢が増えた」といったポジティブな評価が多いです。「新しい体験なのですごく楽しく、ワクワクする」という声もあるなど、いろいろな気づきにつながっています。社内兼業のキャリアプラスの経験者は累積で400人を超えています。制度の浸透とともに、兼業の求人が増加し、いまでは応募者が足りなくなるほど社内で定着しています。プログラムでの経験や学びを通じて、「60歳の定年後もソニーで活躍したい」という人もいれば、シニアインターンシップで刺激を受け、参画した会社で副業を始めた人、他社に転職した人、大学の教員やNPOで働く人などもいます。ある男性エンジニアは「子どもが好き」ということから保育士の資格を取り、いまは保育園で楽しく働いています。大塚増えてきており、6〜7割の人が再雇用を選択しています。3〜4割の人は50代後半からます。今後は60歳以降の人に向けたキャリア支援にも力を入れていきたいと考えています。大塚 律を重視するカルチャーがあることから、ベテラン社員のチャレンジをさらに支援していくべく、キャリア・カンバス・プログラムを導入しました。やはり会社の風土や文化に合った方法を考えたほうがうまくいくと思います。その会社が誇れるような風土や文化を活かした取組みを工夫することが大切です。また、単に「キャリア自律しなさい」と押しつけても、必ずしも自律につながらないのがむずかしいところです。学び直しにしても全員に同じスキルを習得してもらうことに効果があるのかという疑問もあります。ベテラン社員が積み上げてきた経験やスキルは一人ひとり異なります。全員に同じことをやってもらうのではなく、多様な選択肢を用意し、そのなかから自分に合ったものを学んでもらうことが、入口としてあってもよいかもしれません。ソニーには、もともとチャレンジや自―キャリア・カンバス・プログラムの導入から7年が経過していますが、ベテラン社員のキャリア形成への意識はどう変わりましたか。―60歳定年後は再雇用ということですが、定年後も再雇用で働き続ける人はどのくらいいらっしゃるのでしょうか。―ベテラン社員のキャリア支援や学び直しに取り組みたいと考えている企業にアドバイスをお願いします。2024.64 ソニーピープルソリューションズ株式会社 執行役員大塚 康さん60歳にかけて外部で新たなキャリアを歩んでい60歳定年以降も継続して働く人は近年
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