圧器だ。変圧器を主力製品として製造している、富士電機株式会社千葉工場(千葉県市い原は市)に勤務する深山茂雄さんは、40年以上にわたり変圧器の巻線作業に従事。令和5年度「現代の名工」に選ばれた。変圧器は、基本的に鉄心に電線を巻いた一次コイルと二次コイルで構成され、電磁誘導の法則を利用して電圧を変換する。電力は一次コイルによって磁気エネルギーに変換され、鉄心を介して二次コイルに伝達し、再び電力に変換される。電圧は、それぞれのコイルの巻数比を変えることで調整できる。変圧器の心臓部といえるコイルをつくるのが巻線作業だ。「共同作業が多い工場のなかで、一つのコイルを一人で担当する巻線は唯一の個人作業です。図面に表せない部分が多く、電線を巻く際の張り具合の調整など、体で覚える要素が多い仕事といえます」深山さんがおもにたずさわって型が巻ま線せ技ぎ法ほ」(竪巻き)の導入があんうきたてらちきたのは、変電所や工場などで使用される大型の変圧器で、コイルだけでも1〜15トンの重さがある。61ページの写真のような大きな巻型に、電線を重ねて巻いていく。電線や巻き方には、それぞれ用途に応じてさまざまな種類があり、それらを一通り覚えて一人前となる。さらに、変圧器は受注生産で毎回仕様が異なるため、豊富な経験が必要になる。「コイルは決められた仕様・工数内に仕上げる必要があります。例えば寸法なら、1・5ミリ前後の範囲内に収めなければなりません。正確性と品質を保ちつつ、効率よく仕上げる技能が求められます」深山さんは製造方法の改善にも取り組んできた。その一つに「竪たる。同社の巻線作業は、61ページ新たな製造法を導入し品質・効率の向上に貢献62現在は生産管理課主任として工程管理や品質保証を担当するが、繁忙期には現場を手伝う。教え子だった現場のリーダーに指導面でアドバイスをすることも「仕事をやらされている意識では進歩しないので、つねに製品に愛情を持ち、よいものを早くつくろうと考えるように後輩たちに伝えています」
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