後半層の約半数が就業している今日、70歳までの就業環境の整備が企業にとって喫緊の課題となりつつあります。そこで、最後に高齢者雇用の今後のおもな課題を取り上げると、次の2点です。一つは、キャリア支援体制のさらなる拡充です。70歳までの就業環境の整備に必要なのは、まずは70歳まで就業できる雇用制度の整備です。例えば、「65歳定年制+希望者全員の70歳までの継続雇用制度」に見直した、マンガのJEED製パンの雇用制度改定です。さらに、それにあわせて人事処遇(賃金・評価)制度の見直しも必要になります(解説1であらためて紹介します)。雇用制度と人事処遇制度の改定に取り組めばはありません。高齢社員には、その環境のもとで活躍するという意識と業務に必要な知識・スキルや技術を習得してもらうことが必要になります。というのも、高齢社員の多くは元管理職であり、定年退職で管理職を離れ、継続雇用後は現場に戻って活躍するというのが一般的な高齢期のキャリアであるため、現場で活躍するために必要な知識・スキルや技術が不足しています。旧高齢法のもとでは、定年後の65歳までの継続雇用の5年間はこれまで積み上げてきた知識・スキルや技術で活用すること(以下、「現有能力の活用」)ができましたが、70歳就業となるとその期間が10年に延びてしまいます。しかも「10年」という期間で社会をはじめ市場や技術は変化するので、現有能力の活用だけで継続することが困難になります。また、組織運営上の観点から役職定年を導入する企業が大企業を中心に普及しています。例えば、役職定年の年齢を55歳とした場合、現場での就労期間が15年に延びます。そのため、今後は70歳まで活躍できるよう、キャリア教育や現有能力の更新・進化に向けたリスキリングなどのキャリア支援体制のさらなる拡充が求められることになります。二つめは、仕事内容の棚卸し(職務開発・職務再設計)です。継続雇用後の高齢社員の仕事内容は定年時の仕事を継続するのが基本です(管理職は離れるので職責は変わります)。企業、高齢社員双方にとって最も合理的であるからです。高齢社員にとっては、これまでつちかってきた知識・スキルや技術を活かすことができますし、企業にとっても新たな仕事、定年時の仕事とは異なる仕事を担当させる場合の必要な知識・スキルや技術を習得するための能力開発コストが不要になります(ただし、現有能力の更新・進化で発生する能力開発コストは別です)。あります。加齢にともなう身体機能の低下により継続できない場合などが代表例です。加齢にともなう身体機能の低下は、避けることのできない現象です。JEED製パンのように製造業など身体的負荷をともなう業務の職場は、高齢社員の労働災害の発生リスクがある職場です。高齢社員はこれまでのように経営成果への貢献を継続することがむずかしくなります。労働災害を予防し、高齢社員に活き活きと活躍してもらうには、職場環境の改善が必要になりますが(解説3であらためて紹介します)、やはり限界があります。その対応策として、高齢社員の戦力化を進めている企業では、長年の職業人生を通して積み重ねてきた能力・スキル、経験・ノウハウなどを蓄積している高齢社員の優位性を活かして、若手社員の指導や育成を担当させています。高齢社員が活躍できるよう新たに仕事を用意すること(「職務開発」)、仕事内容を見直すこと(「職務再設計」)などの仕事内容の棚卸しが求められます。しかし、高齢社員の仕事内容が変わることが特集新任人事担当者のための高齢者雇用入門11エルダー70歳までの就業環境が整備されたというわけで
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