総合工事業A社県内に3カ所の事業拠点を展開する総合工事業A社は、主力として活躍しているベテラン社員が長く活躍できる就労環境の整備と若手社員への伝承を進めるため、2019年に現行の雇用制度(定年年齢63歳、希望者全員の65歳までの継続雇用)を見直し、定年年齢を65歳、継続雇用の上限年齢を70歳へとそれぞれ引き上げました。継続雇用制度の賃金・評価制度については現行の制度を引き続き継続し、現職継続のフルタイム勤務の場合、基本給は定年時の賃金水準を維持し、評価制度は正社員と同じ制度が適用されています(出典‥(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構〔2023〕『70歳雇用推進事例集2023』)。ら支給(あり)へ、賞与は定額から正社員と同じように人事評価を反映した決め方にそれぞれ見直され、人事評価は正社員と同じ仕組みが用いられるようになりました。さらに、マンガに登場するJEED製パンは70歳までの就業確保措置の努力義務化を企業に課す2021年の改正高齢法施行にあわせて65歳定年制を実施したため、高齢社員のモチベーション低下の問題は解消されました。4これ評評ま価価で制制述べ度度てををきどどたううよ考考うにええ、るる企かか業にとって欠くことのできない重要な戦力となっている高齢社員に活き活きと活躍してもらうためには、仕事の成果や働きぶりに応じた賃金を決めることが求められます。しかし、「仕事の成果や働きぶりに応じた賃金を決める」といっても、70歳まで就業できる賃金・評価制度をどのような仕組みにすればよいかが問題になります。というのも、賃金・評価制度は雇用制度に連動して形成され、しかも、その雇用制度も、総論で述べたように高齢法に則して多様な選択肢があるからです。選択する雇用制度によって、「仕事の成果や働きぶりに応じた賃金を決める」ための賃金・評価制度の仕組みが異なります。現在、多くの企業で一般的となっている「60歳定年+希望者全員の65歳までの継続雇用」の雇用制度(実質65歳定年制)を例にすると、65歳以降の雇用制度をどの制度にするかを決めることからはじめます。60代前半層に適用している現行の制度(希望者全員の65歳までの継続雇用)と同様にするのか、別な制度にするのかです。さらに、あるいは別な制度に見直すかを確認する必要があります。2023年4月に国家公務員の段階的な65歳への定年年齢の引き上げが施行され、が予想されるからです。60代前半層の雇用制度を見直さず、60代後半層の雇用制度だけ整備したとしても、近いうちに65歳定年制導入を準備することになり、雇用制度の見直しに要する労力が大きくなります。マンガに登場するJEED製パンは現行の雇用制度(65歳定年+希望者全員70歳までの継続雇用)の整備を一緒に実施したことで、労力を最小限にとどめることができました。このように仕事の成果や働きぶりに応じた賃金を決める賃金・評価制度を整備する際には、まず70歳まで就業できる雇用制度の基本設計(どの雇用制度にするか)を決めたうえで進めることが求められます。こうした高齢社員のモチベーションの維持・向上を図る賃金・評価制度の整備の事例としてA社の取組みを紹介します。この事例の特徴は、正社員と継続雇用者の雇用制度の見直しを一緒に行い、それにあわせて賃金・評価制度も見直している点です。継続雇用後も同じ業務をフルタイムで続ける場合、正社員と同じ賃金・評価制度を適用特集新任人事担当者のための高齢者雇用入門事例115エルダー65歳定年制導入の動きが今後、本格化すること60代前半層についても、現行の制度を継続するか、7070歳歳就就業業時時代代のの高高齢齢社社員員のの賃賃金金・・
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