エルダー2024年7月号
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意識の変化などがみられました。こうした時代の変化に対応した労働時間などの働き方に係わるルールの整備が求められるなか、1993(平成5)年改正では、週40時間労働時間制の実施、変形労働時間制度の拡充、裁量労働制の規定の整備などが、1998(平成10)年改正では企画業務型裁量労働制の導入が、2003(平成15)年改正では裁量労働制の改正がそれぞれ行われました。こうした一連の法改正を受けて、平成期前半ではフレックスタイム制、変形労働時間制度、裁量労働制の導入などによる労働時間制度の柔軟化が進められました。この時期の継続雇用後の高齢社員の働き方は福祉的雇用のもと、高齢社員に求められる役割が正社員時代に求められた企業の中核人材として基幹業務をになう役割から、パート社員と同じ補助業務を担当して正社員を支援・サポートする役割に変わったため、短日・短時間勤務などの柔軟な働き方が中心でした。第二の動きは平成期後半の「労働時間・労働日数」の柔軟化です。政府が取り組む働き方改革の一環として推進されている「多様な正社員制度」のなかの「短時間正社員」の導入が進められました※2。働き方改革は少子高齢化にともない生産年齢人口が減少するなか、ライフスタイルの変化による就労ニーズの多様化に対応した多様な働き方を選択できる社会の実現を目ざした取組みです。企業は正社員に対して原則としてフルタイム勤務を求めていますが、短時間正社員は育児・介護などと仕事を両立したい社員など、さまざまな人材に勤務日数や勤務時間をフルタイム勤務の正社員よりも短くしながら活躍してもらうための仕組みです。進むなかで、求められる役割が正社員に近い役割(基幹業務をになう役割)に変わったため、平成期前半の短日・短時間勤務中心から正社員と同じフルタイム勤務中心の働き方に変わりました。もちろん、企業は引き続き短日・短時間勤務の働き方を選択できるようにしていますが、高齢社員を貴重な戦力として期待しているためフルタイム勤務の働き方を高齢社員に求めています。JEED製パンの高齢社員の三戸さんは戦力として期待されていることから、持病の治療のための通院をしながら短日勤務で働いているのです。成期の勤務制度の変化は勤務する「時間(労働時間制度、労働時間・労働日数)」の柔軟化でしたが、令和期の勤務制度は勤務する「場所」の柔軟化が特徴です。通常、労働者は仕事をすこの時期の高齢社員の働き方は戦略的活用が第三の動きは、「働く場所」の柔軟化です。平概要おもな内容活用の基本方針働き方短時間・短日勤務中心フルタイム勤務中心取組み内容高齢社員平成期前半労働時間制度の労働時間・労働日数の柔軟化変形労働時間制度、フレックスタイム制、みなし労働時間制、裁量労働制の整備・拡充福祉的雇用平成期後半働く場所の柔軟化柔軟化短時間・短日勤務 (短時間正社員制度)戦略的活用フルタイム勤務中心令和期在宅勤務戦略的活用※2 多様な正社員制度には、短時間正社員のほかに、担当する職務内容が限定されている「職務限定正社員」、転勤範囲が限定されていたり、転居をともなう転勤がない「勤務地限定正社員」の二つのタイプがある※筆者作成18図表 平成期以降の勤務制度の柔軟化の取組み

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