エルダー2024年7月号
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食文化史研究家●永山久夫31エルダーFOOD368トウガラシは、中南米を原産とするナス科の植物。ペルーでは紀元前8千年から7千500年の昔から栽培されていたと伝えられているほど、歴史の古い香辛料の原料です。いまでは、世界中の人々の味覚を楽しませています。それにしても、トウガラシはじつに辛い。食べ過ぎると涙ポロポロですが、その激辛がたまらないのです。トウガラシは、赤い乾果を粉にして使う場合が多く、七味唐がらし、カレー粉、ソース、漬け物などに使用されています。トウガラシの辛味の成分はカプサイシンで、発汗や保温、食欲増進、免疫力強化、疲労回復などの働きがあります。新陳代謝を活発にして、脂肪の燃焼を促進させたり、ホルモンの活性を高めて、意欲を強めたりなどの効果も期待されています。トウガラシを食べていると、体温が上昇したり、汗をかいたりするのも、エネルギーの代謝が向上するためで、脂肪が燃焼され、肥満防止にも役に立つといわれています。トウガラシには、頭の回転をよくし、記憶力の向上に関係のあるビタミンB1も含まれており、情報化時代に用いる香辛料としても理想的です。またトウガラシには、カロテンやビタミンCも含まれていますから、上手に活用すれば、老化を防ぐうえでも役に立ちます。トウガラシの激烈な辛さを中和して、マイルドな薬味にするために考案されたのが「七味唐がらし」。江戸の町人に喜ばれ、大ヒット商品となり、現在も人気のある調味料です。江戸時代後期の『続■■■■■■■飛鳥川』という書物には、張り子のトウガラシをかついだ行商人が「とんとん唐がらし、ひりりと辛いは山■■椒■■■の粉、すはすは辛いが胡■椒■■■の粉、七色唐がらし」と歌いながら、竹筒に入れて売り歩いていたと伝えられています。ほかにも、黒ゴマや青海苔、シソ、陳■■皮■(ミカンの皮)などが使われます。いずれも健康効果の高い材料といわれていますので、上手にとり入れましょう。辛くて涙ポロポロ七味唐がらしの登場赤いトウガラシの辛い味日本史にみる長寿食

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