閉塞感からの脱却を目ざし菊地 もともと、60歳を過ぎても元気であればいつまでも働き続けてもらいたいし、以前の定年年齢の60歳が節目である必要はないと思っていました。加えて、事業を継続し発展させていくうえで、技術やノウハウの継承は不可欠です。高齢社員は後進の育成以外にも会社に貢献できるスキルや経験があり、その能力をもっと発揮してほしいという思いもありました。「生涯現役時代」、「人生100年時代」という言葉があたり前になりつつある時期でしたし、60歳、65歳を超えても、まだまだ勉強して成長する可能性はどんな人にもあると思い、制度改定を行いました。また、もう一つのねらいとして、高齢社員のモチベーション維持の妨げになる要因を排除したかったということもあります。従来の再雇用制度は、1年契約の嘱託社員で処遇もかなり下がります。さらに、60歳まで課長、部長を務めていた管理職が、定年を境に一契約社員になり、元部下の部下になってしまう。環境の急激な変化がモチベーションに悪影響を与えていたことは否めません。当時、社長から「会社の閉塞感を脱却したい、何かよいプランはないか」とたずねられ、評価制度や給与体系の改革なども含めて行ったさまざまな提案のなかの一つとして定年延長があり、これを先行して進めることになったのです。菊地 なかには、60歳定年を前提に生活設計などいろいろ準備をしていた人もいます。「60歳定年を一区切りにし、セカンドキャリアに踏み出したい」という人もいれば、「もう少し準備が必要だから63歳で辞めたい」という人も定年を間近に控えた50代後半の社員のいるでしょうし、そういう人たちにとって、一律に定年を延長することが幸せなのかを考えて選択定年制にしました。年制のままですが、60歳・63歳での定年を選択したのは、制度導入時に数人いた程度で、ほとんどの人が65歳定年を選択しています。なお、2030年度をもって、選択定年制は廃止する予定です。菊地 額程度まで下がっていましたが、制度改定後、度になるように設計しています。当社の基本給は、基礎給(年齢給)と職能給(等級に応じて支給)で構成されており、具体的には51歳以降は基本給を少しずつ減額し、職能給ははありませんが、賞与は60歳以前と同基準で支給しています。 しても必要な人材については、60歳以降も課長や部長として残ってもらう例もありますが、原則的に60歳で役職定年となります。以制度導入から6年が経過し、現在も選択定旧制度では、60歳定年以降、処遇は半また、管理職については、組織運営上どう―貴社では、2018(平成30)年6月に、制度を導入されました。その経緯とねらいについてお聞かせください。―定年を一律に65歳に引き上げるのではなく、60歳、63歳、65歳から選択できる選択定年制を採用していますが、その理由は何でしょう。教えてください。―制度改定以降の高齢社員の処遇について2024.72前澤工業株式会社 上席執行役員 管理本部長菊地和信さん60歳時の水準を維持します。60歳以降の昇給60歳以降の賃金水準は60歳時の75〜85%強程65歳への定年延長および70歳までの継続雇用65歳定年と70歳までの継続雇用制度を導入
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