人員整理にともなう高年齢者雇用の凍結に関する裁判例従うことになるものと解される」と判断したものがあります。ただし、この判例は、高年齢者雇用安定法において、継続雇用の基準を定めることができた当時の判断であり、現時点でも通用するのかについては、検討が必要なものといえます。空会社において、新型コロナウイルス感2航染症の蔓延にともない、業績がきわめて悪化し、役員報酬の減額、役員の減員、早期退職の募集、必要不可欠ではない雇用の停止などを実施したうえで、日本以外の国でも多数の従業員を解雇するにいたっていた状況において、日本における定年後の継続雇用制度を一時的に凍結するという決定をし、当該凍結の結果、雇用契約が終了した従業員と紛争になった事案があります(東京地裁令和5年6月29日判決、アメリカン・エアラインズ事件)。当該裁判例での争点は、①定年後の継続雇用の拒絶について、就業規則上の退職または解雇事由に該当するか否か、②①に該当する場合に解雇権濫用法理が適用されるか否か、③雇用継続への期待可能性が認められ雇止め法理(労働契約法〈以下、「労契法」〉第19条2号)が適用されるか、④津田電気計器事件と同様に定年後に同一条件にて労働契約が成立したといえるか、といった点など多岐にわたります。事件の当事者となった使用者においては、就業規則に「事業縮小、人員整理、組織再編等により社員の職務が削減されたとき」が退職事由と定められており、裁判例においては、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により大幅な減便を余儀なくされ、経費削減(関接部門の正社員30%減員などの労務費削減を含む)に取り組み、あわせて定年退職者の再雇用についても一時凍結したことについては、就業規則に定める退職事由に該当するものと判断しました。さらに、定年後再雇用の拒絶について、解雇権濫用法理が適用されるかという点については、「定年後再雇用の制度は、期間の定めのない労働者が定年に達した場合に退職の効力を一旦発生させた上で、定年後の労働条件についてあらためて協議・合意して労働契約を締結するという構造の制度」であることを理由に、「解雇がされたものではないのであるから、労契法16条が想定し、同条が規定するいわゆる解雇権濫用法理が適用される枠組みとは事案を異にする」として、解雇権濫用法理の適用を否定しました。この点は、退職事由または解雇事由に該当することが必要であり、かつ、客観的かつ合理的な理由と社会通念上の相当性が必要と考えられていた従来の厚生労働省のQ&A※で示されていた考え方とは、異なる考え方を採用していると考えられます。解雇権濫用法理が適用されないということになると、退職事由に該当したとしても、雇用が継続していたというためには、労契法第19条2号による雇止め法理の類推適用を受けるか、もしくは、津田電気計器事件の判例による保護対象となる必要があるということになります。適用の前提となる要件の充足があれば適用可能性があること自体は肯定されましたが、労働契約更新への期待可能性について、「期間の定めのない労働契約が定年により終了した場合であっても、労働者からの申込みがあれば、それに応じて期間の定めのある労働契約を締結することが就業規則等で明定されていたり、確立した慣行となっており、かつ、その場合の労働条件等の労働契約の内容が特定されているということができる場合」には、期待することにも合理的な理由があり得ると判断しました。判断としては、就業規則などに再雇用後の労働契約が特定されていたわけではなく、個別の協議で定まるとされていたことや、会社の経営が急激に悪化している状況などを社内メールで全員に配信するなど説明をしていた状況をふまえて、一定の期待を有していたとしても、そのことが合理的な理由に基づくものとはいいがたいとして、労契法第19条2号の適用もないと判断されました。まず、労契法第19条2号の適用について、しかしながら、当該事案における具体的なそして、津田電気計器事件の判例による保※ 高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係) https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kourei2/qa/45エルダー知っておきたい労働法AA&&Q
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