シニア社員との会話で留意すること○さんの今後の希望についてうかがいたいと思います」といったように、今日の面談の目的を伝えます。面談中、特に重要なスキルは「傾聴」と「問いかけ」のスキルです。「傾聴」には、話し手が話を続けることを励ます効果があるといわれています。相手の話に聞き入りながら、相槌を打ったり、「…ということがあったのですね」と相手の言葉をくり返したり、「たいへんなご苦労があったのですね」と相手の話を受けとめたりします。パーソル総合研究所の調査結果によれば、部下の話を傾聴できている・しようとしているという上司の認識は、部下より約1・5倍高い傾向にあるそうです(図表)。上司の方はよりていねいな傾聴を心がける必要があるかもしれません。「問いかけ」の代表的なスキルには、「オープン・クエスチョン」と「クローズド・クエスチョン」があります。例えば、相手の話を広げたり、深掘したりするときには、「もう少し詳しく教えていただけますか?」といったように、相手が自由に話せるオープン・クエスチョンを使います。相手の話を要約して整理したいときには「いまのお話はつまり、…ということで合っていますか?」といったように「はい」か「いいえ」で答えられるクローズド・クエスチョンを使います。上司としての期待やフィードバックを伝えたいときは、上から目線にならないように、例えば「いまの仕事は、○○さんなら充分期待に応えていただけると思うし、○○さんのこれからにとってもプラスにもなると私は思っているのですが、○○さんはどのようにお考えですか?」といったように、「私」を主語にして肯定的なニュアンスを含めて問いかけます。もし気持ちや考えにギャップがあっても、すぐに埋めようとせず、「わかりました。では、〇〇さんのお気持ちやお考えをあらためて聞かせていただけますか?」と問いかけ、次回の面談の約束を得るなど、結論を急がないようにします。会話を通じて立てた目標や、次の面談で話し合う内容、今後の進め方などを整理して伝えます。する必要があります。過去から長時間働くことを美徳とされ、無理を重ねてきた方も多いのではないでしょうか。また、役割の変更によって、仕事の量や質、職場の人間関係がこれまでと変わっている場合もあります。このようなことが強いストレスとなり、心身に不調をきたした場合、仕事ぶりに表われるまでは気づきにくいものです。ある管理職の方は、シニア社員と会話する際に、「最近パソコンの文字が見えづらくなりました。〇〇さんはいかがですか」と笑顔で先に自己開示することで、「じつは私も…」という自己開示を引き出しているそうです。このような年長者に対する敬意を交えた会話の工夫や、普段の様子から面談前に聞きたいことを整理しておくといった事前準備、いつもと異なる様子が見られたときのタイムリーな声がけといった日常からのかかわりも、相互理解や信頼関係を築くための重要なスキルといえそうです。面談を終えるときには、今日の会話をふり返り、シニア社員は、健康状態については特に留意シニア社員を活かすための面談入門部下認識上司認識上司 n=635 部下 n=2327あてはまる計(%)部下の思いや意見を【いったん受け入れようとしている】上司側に約1.5倍の過剰認識84.784.756.056.086.386.357.657.649図表 傾聴行動についての上司と部下の認識ギャップエルダー(%)100.090.080.070.060.050.040.030.020.010.00.0部下の話を【最後まで丁寧に聞く】出典:パーソル総合研究所「職場のハラスメントについての定量調査」(2022年)
元のページ ../index.html#51