役員報酬には支払い方法の種類が複数ある・・・・・・今回は、役員報酬について取り上げます。役員報酬とは、簡単にいうと「役員に求められる役割・業務遂行等に対する対価」のことです。役員とは、取締役・執行役・会計参与・監査役・理事・監事および清算人という幅広い対象者となります※1。ただし、役員の対象によって支払い条件に異なる部分があることや、対象者数として最も多いのが取締役であることから、本稿では〝取締役に対する報酬〟を中心に解説していきます。最初に、役員報酬の種類について押さえていきます。役員報酬は、毎月の給与に該当する基本報酬とあらかじめ設定した条件(利益目標の達成や成長率等)を達成することで支払われるインセンティブ、退職時に支給される退職慰労金に大別されます。基本報酬は原則、毎月一定額で支払われることから固定報酬、インセンティブは支払い有無や支払額が条件達成度合いで異なることから変動報酬と呼ぶこともあります。ここまでだと従業員の給与・賞与・退職金の関係に近くイメージしやすいと思いますが、従業員の給与等にあまりみられない支払い方法として、非金銭報酬というものがあります。従業員の場合は労働基準法上、給与は現金で支払うことと定められ、役員報酬でも基本報酬は現金(金銭報酬)で支払われることが多いのですが、インセンティブについては、上場企業の場合は会社の業績・成長と株価の関連性が強いことから、自社株式の付与をもって報酬とする株式報酬(非金銭報酬)を用いるケースが多くみられます。役員報酬には税法上の制約もあるている事項を遵守すれば給与・賞与等は会社毎のペイポリシー(支払いに対する基本的な考え方)に従って自由に設計でき、支払額については原則、法人税法※2上の損金(経費)として算入(損金算入)できますが、役員報酬の場合には次のいずれかの支払い方法に該当しない場合には損金算入が認められない※3という制約があります。①定期同額給与②事前確定届出給与従業員の場合には、労働基準法等に定められ1カ月以下の一定期間ごとに同額で支給するもの。所定の時期に確定額の金銭または確定数の株式等を支給することを事前に定めた届出書を税務署に提出し、届け出た時期と金額通りに支給するもの。※1 各々の役割・設置条件については、本連載第16回「役員」(2021年9月号)を参照 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202109/html5.html#page=52※2 法人税…… 法人の企業活動により得られる所得に対して課される税。法人の所得金額は、益金の額から損金の額を引いた金額となる※3 役員報酬の損金算入が認められないと損金と認められる額が小さくなり、課税対象となる所得が大きくなる➡2024.750株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。「役員報酬」第48回■■■■■■■■いまさら聞けない人事用語辞典
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