菊地1年間に担当する業務やミッション、期待する成果を上司と話し合って記入する「担当業務記述書」に基づいて評価する仕組みを設けています。目標管理制度のようなものですが、プレイヤーとして目ざす数値目標や、「この人を育成します」といった、特に力を入れる項目を記入し、契約更新日にこの「業務成果」と「責任感」、「リーダーシップ」の3点について自己評価と上司評価を行います。この評価結果は継続雇用終了の70歳のときに支給される「功労金」に反映されます。標準のB評価が5ポイント、A評価が20ポイント、S評価が40ポイントになり、1ポイントの単価は1万円です。S評価を取り続ければ5年間で200万円になりますし、働くインセンティブとして機能していると思います。もう一つ「行動評価シート」というものが あります。「後輩を育てることに熱心ですか」、「後輩の意見や考えに耳を傾けることが多いですか」といった項目を5段階評価するものです。実際の評価にはあまり活用しませんが、周囲の社員が本人の働きぶりをどう見ているのか、ふり返ってもらうためのフィードバッ(聞き手・文/溝上憲文撮影/中岡泰博)継続雇用者向けの新たな評価制度がモチベーション維持・向上のインセンティブにクに使っています。菊地 が、じつは70歳以降もそれまでと同じ条件で1年更新で働いている社員もいます。職場のニーズがあり、本人も健康で意欲があり、期待する成果を出すことができる人材であれば、「70歳で終わり」という線引きはしていません。現在の最高齢者は74歳です。将来的にはエイジレスな制度への改定を行う可能性もありますが、いまは制度を変えなくても自然体でうまく運用できていると思っています。菊地 が一律にやるべきなのかもわかりません。多制度上は70歳というルールがあります業界や業種の特性もありますし、企業くの会社は人材確保を出発点に、支払う賃金の問題も含めて検討に入っていると思いますが、当社も社員に長く勤めてもらうことを前提に検討を行いました。中途採用も増やしていますが、これまで数社の転職を経て入社した人にも、当社を最後に長く活躍してほしいですし、当社での勤務を通じて将来の生活設計を考えることができるような制度をつくってきました。大切なことは「シニアに何を期待するのか」という会社の軸を明確にすることだと思います。それが定まれば、定年延長や継続雇用制度の改定に向けた具体的な検討も進むでしょう。「世の中の動きがこうだから」など、周りに流されたうえでの制度変更は、いずれ無理がくるかもしれません。当社の制度改定も、最初は思いきった決断であり、勇気も必要でしたが、いまでは定着し多くの高齢社員が活躍しており、取組みを進めてよかったと感じています。―継続雇用の社員に意欲を持って働いてもらうために何か工夫していることはありますか。―高齢社員に明確な役割と目標を明示することは重要ですね。継続雇用は70歳までですが、その先も見すえているのですか。―65歳定年制を導入する企業はまだまだ少ないのが現状です。定年の延長も含めて65歳以降の雇用に取り組む企業にアドバイスをお願いします。2024.74前澤工業株式会社 上席執行役員 管理本部長菊地和信さん
元のページ ../index.html#6