https://www.kamakurabori-kougeikan.j伝統鎌倉彫事業協同組合TEL:0467(23)0154100年後の人たちにも使い続けられる器をつくりたい(撮影・福田栄夫/取材・増田忠英)pうんいにならい、5年かけて5000本をやり遂げたことが、その後の自信につながったという。訓練校を2年で卒業した後は、「翠す山ざ堂ど」という鎌倉彫の工房に就職。18年間勤めた後、独立した。「当時の私が目ざしていたのは、個人ではなく何人かのチームでよいものをつくることでした。分業してそれぞれが高い技術力を持てば、完成度の高いものができると考えていたからです。しかし、現実にはほかの職人と思いを共有することはむずかしく、遅まきながら独立して一人でやってきました」当時は昭和から平成に変わるころで、冠婚葬祭の引き出物や会社の記念品などの大量注文が減りつつあった。また、家庭で茶托やお盆を使うことも少なくなり、産業として下火になっていることを感じた時期でもあった。独立後は、デパートやギャラリーなどへの出展を通じて一般客から生の声を聞く機会が増え、使い手の立場に立ったものづくりの意識がより強くなったという。独自に考案した模様や色を施した遠藤さんの作品は、鎌倉彫から逸脱していると見られることもあるそうだ。それでも「世の中から手づくりのものがどんどん失われていくなかで、100年後の人たちにも使い続けてもらえるものをつくりたい」という思いのもと、手づくりのよさが伝わる器を探求し続けている。また、次代をになう子どもたちに鎌倉彫の魅力を伝えるため、20年近くにわたり毎年県内の小中学校で出前授業を行っている。「生きているかぎり鎌倉彫をつくり続けていきたいですし、後継者も育てたいと思っています」 vol.341鎌倉市由比ヶ浜の「鎌倉彫工芸館」。鎌倉彫職人の作品が展示されている指物ではなく、木の塊をくり抜いてつくられた重箱。漆に酸化チタン(白い顔料)と少量のベンガラ(赤い顔料)を混ぜ、独特の色合いに。黒や朱が主流の鎌倉彫で、新たな試みの一つ小刀、平刀、丸刀、三角刀など、形状の異なる100本以上の彫刻刀を用途に応じて使い分ける幅2寸(約6センチ)の叩きノミで削った痕をそのまま活かすことで、おおらかなイメージを表現した鉢。表面の色は、顔料が入っていない漆そのままの色が活かされている61ページ写真の重箱や箸箱の表面は、刷毛やヘラをつくるための道具「塗ぬ師し屋や小こ刀がたな」で複数の傷をつけた独自の模様が施されている取材時、展示会への出展用に試作していた片口。「軽さを味わってもらいたい」と、桂よりもさらに軽い桐の木を使っている63エルダー
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