エルダー2024年8月号
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い領域なので、経営層を中心に検討します。②アナログのデジタル置換稼ぐ力をより高めることを念頭に、アナログをデジタルに置き換えます。目的は効率化&省力化です。業務の負荷を減らし、より「稼ぐ力」に集中できる体制を整えます。ここでのデジタル化には、手書きのチェックシートをタブレット入力にしたり、定型的な入力作業をロボットで自働化したりするなどがあります。最近の飲食店では、卓上のタブレットやゲストの携帯電話でオーダーするシステムを見ます。これらの店では「オーダーをとる作業」をデジタルで省人化し、余力ができた分を「料理の説明やお客さまへの細やかな応対」にふり分けることで稼ぐ力を高めています。アナログをデジタルに置換するには、「業務の棚卸し(自分たちの業務を、かかっている時間や頻度とともに書き出してみること)」を実行し、そこから改善する業務を選定します。業務負荷の大きさ、改善の実現容易性などを参考にデジタル化する業務を決めます。悩んだ際はWebなどで「先行事例」を探しましょう。ほとんどの場合、類似の先行事例が見つかるはずです。先行事例があればコストとリターンを見積もりやすくなるので、投資の意思決定が楽になります。成功のコツは、「複数の小さなヒット」をねらうことです。いきなり大きなデジタル化を進めるより、現場の意見を聞きながら、チェックシートのデジタル化のような小規模な挑戦を、スピード感をもって重ねていくことが有効です。現場にいるシニアの意見は積極的に取り込んでください。「自己決定理論」によると、自分の行動を自分で決めていると感じられることは達成意欲を高めます。最初からデジタル化に乗り気なシニアは少ないかもしれませんが、デジタル化することへの意見を求めたり、デジタル化した後にもフィードバックを求めたりすることで、「この会社のデジタル化に自分は主体的にかかわっており、影響を及ぼしている」と感じてもらうことができます。DXとは単なるデジタル化ではなく、このような文化的変容をともなう「変革」なのです。③稼ぐ力をデジタルで強化Webを検索すれば、いろいろなデジタル化の成功事例が見られます。介護事業の例では、利用者の移動を検知するセンサーを設置して思わぬ転倒やけがの予防につなげていたり、画像認識AIを用いて異常の早期発見につなげていたりする例があります。このように、稼ぐ力(ここでは「介護力」)をデジタルで強化するのが最後のステップです。このステップでは、現場の観察や担当者からの聞き取りがより大事になります。シニア社員は日常の業務において、どのような面に問題や改善の余地を感じているのか? 対してどんな支援があれば稼ぐ力はいっそう高まるのか? 見交換してください。れば、シニアもデジタル化の効果を実感し、前向きな意見が増えてきます。シニアは若年層と比べて「デジタル技術」には詳しくないかもしれません。しかし、顧客理解や業務そのものへの理解が劣っているわけではありません。むしろ過去の業務経験や自らの人生経験に照らして、新しい発見を自社のビジネスにもたらしてくれる可能性があります。介護事業のように、シニア社員の目線が主要なユーザー層と近い場合はもちろん、おもな顧客層が若年層であっても同様です。ouTubeを始め、登録者数8万人の人気者になったというニュースがありました。動画制作や投稿をサポートしているのは15歳(当時)のお孫さんです。シニアの意見を若者が拾い上げて実現する、というあり方には、超高齢化社会のわが国にあって、あらためて評価されるべき戦略的価値があるように思います。そんな視点でていねいに現場と意アナログのデジタル置換がある程度進んでい団地で一人暮らしの85歳(当時)の女性がYシニア社員に10

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