ンを使える従業員は夫妻のほかに1人のみ。また、宿泊客の好みや要望などが従業員間で共有されておらず、常連のお客さまに同じ質問を何度もしてしまうということもあったという。そのほか、従業員の仕事はサービス係、フロント係、調理係などに細分化されているが、フロント係が多忙をきわめていても、別の係は手が空いているといったこともあり、日常的な業務においても非効率的な面が多々あったという。そうした状況の分析を行い、従業員には事業継続が危機的状況にあることを説明したうえで、経営改善のために同社では次の方針を打ち出した。①情報の「見える化」②PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)の高速化③情報は持つだけでなく活用させる④仕事を効率化し、お客さまとの会話と接点を増やすこれらを推進していくためには、旅館経営を支える基幹システムが必要と判断し、当時市販されていたホテル・旅館向け基幹システムの導入を検討した。しかし、自社に適したものが見あたらなかったことから、独自のシステムを開発することを決断し、システムエンジニアを1人採用した。その結果誕生したのが、旅館業に特化したクラウド型基幹システム「陣屋コネクト」だ。陣屋コネクトは、予約台帳・顧客台帳をペーパーレス化したもので、タブレットを通じてすべての顧客情報がそれを必要とする従業員と共有され接客サービスの向上につながる。また、仕入れ・原価管理、設備管理、勤怠管理や会計処理などを一元管理することで効率化・最適化も図ることができる、旅館経営を行ううえで画期的なシステムである。陣屋コネクトを導入したものの、全従業員が使いこなせるようになるまでには、いくつかの工夫と苦労、時間が必要だった。まず、それまではあたり前だった紙の予定表やメモ書き、ホワイトボードの使用を禁止し、報告や連絡、承認、レポートの提出はすべて陣屋コネクトで行うことを社内ルールとし、情報端末を全員に支給した。勤怠管理も陣屋コネクトで行うため、システムにログインしないとそもそも仕事を始めることができず、全従業員が情報端末を使わざるを得ない状況をつくった。陣屋コネクトを導入したのは2010年3月のこと。従業員数は80人ほどで、60歳前後からトフォンを持つ人はほとんどおらず、パソコンに触れたこともないという人が大半だったそうだ。そうしたなかでDXを推進したため、メモ書き禁止などのルール化に対し、反発は大きかったという。「『パソコンはこわいもの』、『壊したらたいへん』というイメージを持っているベテラン世代の従業員が多く、『なるべく触りたくない』という雰囲気が当初からありました」と代表取締役・女将の宮﨑知子さんは、DX推進に取り組み始めた15年前をふり返る。宮﨑さんは、「ATMを使ったことがあるなら大丈夫。簡単に壊れたりはしないし、むずかしいものではない」と説明し、実際に使ってもらいながら、「わからないことは、そのつど聞いてください」と、ていねいな説明をくり返し、その浸透を図っていった。設けなかったという。一同を集めて30分間説明をしても、興味がない人には効果がないと考えたからだ。とを何度も聞く人もいたが、根気よく対応した。取組みの推進にあたり重視したのは、「報告や連絡はすべて陣屋コネクトで送信する」、「手書きでは受け取らない」といった最初に決めた社内ルールの徹底。一人でも例外を許してしまう特に陣屋コネクトの使い方教室のような場は慣れるまでの時間は人によって違い、同じこ70代の従業員が多かったという。当時はスマー2024.824社社内内ルルーールルをを徹徹底底しし例例外外をを認認めめずず実実際際にに使使ううここととでで体体得得ししててももららうう
元のページ ../index.html#26