いなか、有期労働契約で勤務を継続する高齢者が増えていき、その雇用継続への期待は高まっていく可能性があり、そのことは、労働契約法第19条に定める雇用継続の期待とも関連する事情となっていきます。そこで、65歳を超えた労働者を人材として活用していくにあたっても、どのような基準や時期をもって、労働契約の終了を判断していくのかという点は、課題になっていくであろうと考えられます。が維持されていた労働者らが、雇止めを受け、当該雇止めが権利の濫用で違法であるとして慰謝料を請求した事案があります(横浜地裁令和元年9月26日判決)。タクシー事業を営む会社であり、代表者が健康かつ接客態度および業務態度が良好な乗務員については、65歳以上であっても再雇用すると述べており、タクシーの運転手としてめが違法であるか否かが争点となりましたが、裁判所は、会社による雇止めを違法とは認めませんでした。その理由として、当該労働者が交通事故を4回生じさせ、全ドライバーのなかでも4番目に多かったことや、雇用更新の前に観光バスの前に割り込む運転を行い、警察から注意をされたにもかかわらず、自ら非を認めず謝罪や反省などをしなかったという事情がありました。このような事情は、裁判所に「原告が…乗務員となった後の交通事故発生率が比較的高く、とりわけ本件雇止め直前…に立て続けに事故を惹起していること、それにもかかわらず前記危険運転行為(注:観光バスの前に割り込む運転のこと)に及び、これについて反省や今後事故を回避するための方策を真摯に検討する様子が伺えない点を踏まえると、被告が、今後原告の運転により重大な事故等が発生することを危惧し、前記運転行為について真摯な謝罪や反省がなければ契約の更新を行うことはできないと判断したことは、やむを得ないというべき」と評価されました。この裁判例は年齢についても言及しており、「原告は、本件雇止め時点で69歳と高齢であって、年々身体能力が低下していくこと自体は否めず、その程度如何によっては、雇用契約が更新されなくなる可能性も否定できないのであるから、その意味で原告の雇用契約更新への期待の程度は限定的である」という判断がなされています。3紹介した裁判例において、69歳という年齢について年々身体能力が低下していくこと自体は否めないことを前提としていることは、多くの使用者においても参考になるであろうと考えられます。ただし、運転手という職業との関連性を考慮してのことであろうと考えられますので、自社内での具体的な判断にあたっては、業務と身体能力の関連性もふまえた判断を行っていくことには、留意する必要があります。なく、その表れともいえる事故の回数という事象が生じていたことも捨象することができません。年齢を理由に雇止めができるというわけではなく、身体能力の低下とその発現としての業務上の不備やミスなどを記録しつつ、その改善の余地がなくなってしまったことという状況が、雇止めを適法と判断されるための重要なポイントとなっています。したがって、高齢になるにつれて、そのようなミスなどが生じていないかという点は更新時期の直前ではなく、一定の期間をもって評価ができるような体制にしておくことが望ましいと考えられます。に雇用すると述べていたことは、紛争の火種になってしまった部分があるといえそうです。労働契約法第19条においても、雇用継続への期待が要件となっているように、期待を生じさせてしまう発言は、全体に対して伝えるよりは個別の労働者ごとに判断したうえでまた、年齢による身体能力の低下だけでは他方で、代表者が、65歳を超えても積極的裁判例の紹介裁判例の評価69歳まで雇用を継続されていた労働者の雇止65歳を超えて継続的に有期労働契約で雇用45エルダー2知っておきたい労働法AA&&Q
元のページ ../index.html#47