定められた時間働いたと〝みなす〟制度裁量労働制の対象業務今回は、裁量労働制について取り上げます。2024(令和6)年4月1日施行で、裁量労働制に関する厚生労働省令・大臣告示の改正があったため、その内容も含めて解説していきます。裁量労働制とは、業務遂行の手段や時間配分などを大幅に労働者の裁量に委ねる制度です。「裁量」とは一般的には本人の考えや判断により実行に移すことをさします。この制度が適用されると、実際に働いた時間にかかわらず、会社と労働者間で定めた時間分を働いたとみなす(実際にあったものとして扱う)ことになります。企業が定める就業時間である所定労働時間が8時間の場合、7時間しか働かないときは欠勤扱いになり1時間分の賃金は減少、9時間働いた場合は時間外労働となり1時間分の時間外手当を支給というのが基本的な労働時間と賃金の考え方です。一方、裁量労働制の場合、1日8時間働いたとするみなし時間を定めると、7時間働いても9時間働いても支払われる賃金は変わらないというのが原則です。このことから、裁量労働制はみなし労働時間制の一部といわれています。ほかのみなし労働時間制に該当するものに事業場外みなし労働時間制がありますが、こちらは労働時間の全部または一部を事業場外での業務に従事した場合に労働時間の「算定」が困難な際に働いたとみなす制度なので、「裁量」による時間配分により働いたとみなす裁量労働制とは別物です。量労働制」(以下、「専門型」)または「企画業務型裁量労働制」(以下、「企画型」)のいずれかの条件を満たす必要があります。この専門型か企画型かは、対象となる業務の違いです。まずは専門型ですが、高度な専門性を必要とする業務の性質上、業務遂行において本人の大幅な裁量があると想定される20の対象業務が厚生労働省令および大臣告示にて定められています(図表)。なお、図表の13「いわゆるM&Aアドバイザーの業務」については、冒頭で述べた令和6年施行の法改正により追加された業務です。次に企画型ですが、具体的な業務指定はなく、「事業の運営に関する事項についての業務」、「企画、立案、調査および分析の業務」、「業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務」、「業務遂行の手段および時間配分について、使用者が具体的な指示をしない業務」で裁量労働制を適用するには、「専門業務型裁株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。2024.850第49回「裁量労働制」■■■■■■■■いまさら聞けない人事用語辞典
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