エルダー2024年8月号
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(聞き手・文/溝上憲文撮影/中岡泰博)社員のライフプラン研修で重要なのは最初に公的制度を徹底的に学んでもらうこと事ですが、20〜30代は自分への投資を重視してほしいと思います。づくりの比重が高くなりますが、それでも修学期の子どもを抱えていると「目の前のお金が出ていく一方で、とても老後まで手が回らない」という人が多くいます。それでも子どもが高校生になれば、高校卒業後の進路も含め、教育費の上限も見えてきます。その場合、時間軸をずらして、「3年後はこのお金を老後に回そう」、「5年後に資産づくりを始めよう」と計画を立てる。決して遅くはなく、キャッチアップはいくらでも可能です。もちろん、そのお金を使って勉強し、キャリアチェンジもできます。人的資産づくりは若い人限定ではなく、50歳を過ぎても、再投資することでさらに高めることができます。山中 最適なのは確定拠出年金でしょう。iDeCo+(イデコプラス)と企業型確定拠出年金(DC)の二つがあります。iDeCo+は従業員がやっているiDeCoに会社がプラスして掛金を出すことです。会社の掛金は全額損金で落ちます。会社員の場合、iDeCoの掛金の上限は2万3000円ですが、個人と会社の合計の掛金がその範囲内に収まればよく、会社が3000円、5000円上乗せしてくれると社員はうれしいものですし、会社も福利厚生制度として老後の年金を応援する制度があると、それを採用活動でアピールすることもできます。ただし、従業員300人以下の会社しか使えません。退職金制度を新たに導入するのであればDCでしょう。例えば、従業員の賃金を1万円上げると、会社としては15%の法定福利費が発生し、また従業員もそこから社会保険料や税金が引かれ手取りは7〜8割程度となるでしょう。しかし、会社がDCの掛金として従業員に1万円を拠出すると、それらの負担は発生しません。実質的に15%の法定福利費を削減しながら福利厚生の拡充ができるのです。DCは転職しても持ち運びができますし、特に新卒や中途採用の求職者は「退職金制度があってあたり前」という感覚を持っています。求人票に「企業型DCあり」と書くことは採用活動でも有効だと思います。山中 の仕組みを徹底的に学んでもらうことです。税金や社会保険の処理はいままで会社がやってくれましたが、退職後は全部自分でやらなくてはいけません。また介護保険についても学び、どんな福祉サービスがあるのかも教えてほしいですね。いずれはどんな人でも介護が必要になるので、介護保険やベースになる公的制度を学んだうえで資産形成について教えることです。ライフプラン研修の講師を金融機関に依頼すると、退職金を活用してもらおうと資産形成から入るケースが多いのです。順番としては最初に、税と社会保険について徹底的に学んでもらうことをおすすめします。まず税金や社会保険制度など公的制度―定年退職後を見すえた社員の資産形成を支援していくうえで、中小企業が利用可能な制度について教えてください。が、情報提供や教育のポイントは何でしょうか。―ライフプラン研修を行う企業は多いです ファイナンシャルプランナー一般社団法人公的保険アドバイザー協会 理事山中伸枝さん2024.8440〜50代になると人的資産よりも金融資産

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