エルダー2024年8月号
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ていねいな縫製で早くきれいに仕上げることを求められる じ素材を用い、熟練した技術でオリジナルの洋服をつくることです」と須藤さん。オートクチュールのアトリエで約12年にわたり、一般の注文服をはじめ、皇室のドレス、雑誌に掲載する作品、コレクションの作品など、さまざまな洋服の縫製を担当した経験が、須藤さんの技能を支えているという。そのアトリエでの経験から、須藤さんが仕立てにおいて大事にしていることが二つある。一つは、「手を加えることでオリジナル性を高めること」。例えば、61ページ写真左端のコートは前述の技能コンクール受賞作品だが、プレーンなデザインのシルエットに、アップリケ、毛糸のステッチ、フリンジといった手芸的な技法を加えることで独自のデザインにしている。そのほかの洋服にも、オートクチュール仕込みの多様な技法が用いられている。もう一つは「ていねいで味のある仕立て」。63ページ左下写真のジャケットは、紳士服のようなカチッとした印象ではなく、柔らかい風合いに仕立てられている。芯に接着芯ではなく毛けん芯を用い「ハ刺ざし」で襟の返りをソフトにしたり、アイロンによる「くせ取り」で立体的なシルエットをつくり出している。「よいものを見る目がないと、よい服はつくれません。その目は、やはりオートクチュールのアトリエでつちかわれたと思います」子どものころから縫い物や編み物が好きだった。「戦後でまだ物がなかった時代に、母が子どもの服を手づくりしてくれました。その影響があったのかもしれません」「洋服づくりをしたい」という夢が膨らみ、高校卒業後は洋裁学校に進学。卒業後、実家の脇に「年を重ねても続けられる仕事で本当によかったと思います」と須藤さん。「洋裁をやっている先生は、長生きで仕事を続けられている方が多い」とのこと62「『流は万流、仕上げは一つ』。いろいろなやり方がありますが、試行錯誤して、早くきれいに仕立てる自分なりのやり方を見つけることが大切」

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